陸 ページ14
ギャンブラーの男が、ちょっくらシンジュク行って様子を見てくる、と行って家を飛び出してから早一時間。
スマートフォンには、医者とのツーショットが送られてきた。
そしてメッセージは…
なんも覚えてなかったぜ、コイツ!どうなってんだ!?
と、よく分からない顔文字と共に送られてきた。
興味深そうに覗き込んでくる狐に、それを話す。
｢覚えていたら、そやつはさっきのドッペルゲンガーと言うことになる。
ドッペルゲンガーはその人物の裏側、つまり奥深くにある黒い感情や性格が別れてなるもの。
人物本人が自覚していないものじゃから、ドッペルゲンガーが戻ったところで覚えとらんよ｣
｢それでは、あの男の子の思いも…?｣
｢さぁ?それは分からん。
その変化は、神ならぬ……本人のみぞ知る、じゃな｣
それにしてもコレは凄いの〜と、スマートフォンをまじまじと観察する狐。
先程とは雰囲気がだいぶ変わって、今は何だか子供みたいだ。
｢ふふっ｣
縁側で、二人並んで月を見上げる。
もうこの場所が、俺たちの定位置になりつつある。
触れそうで、触れない肩。
好きだと自覚した今、この距離がとても特別なものになった。
以前ならば、こんな風に月を見なかった。
まず、一人だった。
ずっと、ずっと。
お爺さんとお婆さんが亡くなってから、ずっと……。
｢………思えども…なほぞあやしき逢ふことの…なかりし昔………いかでへつらむ…｣
恋を歌った、和歌。
貴方を恋しく思っていると、逢う前はどんな気持ちで過ごしていたのか不思議だ。
そういった意味の歌だ。
とても、今の己の心情を表した恋歌。
｢明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな｣
｢えっ…｣
｢ん?お前さんが熱烈な歌を唄うから、わしも思ったことを唄っただけじゃよ?
ま、夜が明けようが一緒におるがな｣
｢あ、あっ…｣
夜が明ければ、また日は暮れて貴方に会えると分かっていても、やはり貴方と別れる夜明けは恨めしく思う。
そういう意味の、恋の歌だ。
｢わしは、少しもお前さんと離れたくない。
夜が明けようが、日が暮れようが、一緒に居たい｣
俺も、一緒に居たい。
そう言えれば良かったのだが、俺は混乱してしまい…。
｢も、ももも、もう遅いので、ね、寝ますね!お休みなさい!!!｣
全速力で寝室へと向かってしまった。
｢……これじゃ、真逆じゃな｣
｢あんなの、ずるい…っ…｣
夜が明けて、日が昇ったらば、その愛しい姿をまた見せて欲しい。
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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします！！！！！！ぜひ続きを書いてください！ (2023年4月16日 14時) (
レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます！体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：心春 | 作成日時：2020年1月12日 9時
