真逆 3

【週刊誌編】6話 ページ17

久しぶりの課長からの無理難題も、何とこなしつつ今はお昼休み。

(あﾞ〜……本当にあのハゲ、残りの毛根も死滅すればいいのに…)

一二三の手作り弁当を手に、会社裏で休憩をする独歩。

｢……そういえば、久しぶりだな。一二三の手作り…｣

Aと結婚し、同棲を初めてからはずっとAの作る弁当だった。
蓋を開け、一口食べる。

｢……相変わらず美味い｣

けれど、どこか物足りなさを感じた。

｢A…会いたいよっ…｣

この一週間、会うことはもちろん、連絡すらしていない。
電話をしようとしても、別れ際のAを思い出し、スマホを閉じるを繰り返していた。

そして、Aからの連絡も無い。

独歩は凹み、お弁当をノロノロと食べていると…聞いた事のある声が聞こえた。

｢こんにちは、観音坂くん｣

｢さ、咲久峰さん!?｣

そこに居たのは、Aのかつての上司である咲久峰だった。その手には二つ、缶コーヒーが握られている。

｢微糖、無糖どっち?｣

｢え?｣

｢どっち?｣

｢……えっと、無糖?｣

｢はい、どうぞ｣

咲久峰は、ブラックと書かれた缶コーヒーを独歩に渡し、隣に腰かけた。
缶を開ける音だけが響く。

(な、なんで…隣に?
つか、このコーヒーは飲んでも平気なのか?)

そんな事を独歩が考えてるとは思っていない咲久峰は、本題を切り出す。

｢SNSでだけど、週刊誌の記事見たわ。
貴方、Aくんを振ったんじゃなかったの?｣

｢あ、それは……色々あって…｣

｢……あっそう｣

数分の沈黙。独歩は気まずさと緊張から、お弁当の味が分からなくなっていた。

｢ね…Aくん、元気かしら?｣

咲久峰は缶コーヒーに目をやりながら、独歩に聞いた。

｢………多分、元気だと思います｣

｢多分?｣

｢週刊誌に撮られてから、会ってないので…｣

｢………そう、なの。
……二人を祝おうと思ったのに、無駄足だったわね｣

｢え!?｣

｢部署が違うとは言えど、その‘ありえない’みたいな反応は失礼じゃないかしら｣

｢す、すみません!!｣

独歩は謝ったが、内心はまだ‘ありえない’と思っていた。
咲久峰のAに対する‘重さ’を、目にしているからだ。

｢……反省したのよ。彼をクビにしたこと、そして今までの自分の行いを…｣

｢反省…ですか｣

｢えぇ、男漁りもしてないし、仕事を押し付けるなんて事もしてない。
今更だけど、変わるきっかけをくれた貴方たちに、お礼とお祝いをって思ってたんだけどね｣

苦笑いする咲久峰を見て、独歩は確かに‘変わったんだ’と思った。

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