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「持っててええんや。この気持ちって」

「そうやで。せっかく見つけた君のかわええ感情なんや。それはみんながみんな持てるもんとちゃうのに捨てるなんてもったいなさ過ぎる。大事に大事に持っとき。持ってくだけでもええから」

「…そんな風に言うてくれる人が居るだけで、息がしやすいですね」

「そう?」

「大事にしまっときます。…へへ、今までは、捨てようって必死やったから……なんか、変な感じやけど」

「…伝えるだけが、恋とちゃうもんね」



さっきまでの凛とした顔が、切なげに歪む。

僕への同情心のように見えるけど、きっとそうやない。

僕の先に、誰かを見て憂いてるんや。



「…重岡さん?」

「ごめん。いやそっか…そうやんね。持っとき、てのは…無責任やった」

「なんでですか?」

「好きなものを好きって言えへんのは、辛い、やんね」



確かにそう言われてしまえば、その答えは「はい」だ。

でも、それはその質問だけを考えるならの話。



「俺の家族におるんよ、そんなヤツが。……多分、俺がそうさせてる」

「重岡さんが?」

「俺が居らんとあかんねん。けど、俺がいるとあかんねん。なんて…ハハ、君が話してくれたからついつい俺も…」

「伝えない、っていう愛が、ある……んやないでしょうか」

「え?」

「重岡さんが捨てなくて良いって言うてくれて…なら僕はこれを、この気持ちを、どうしようって少し考えたんです」



伝えるだけが恋やない。けど好きやと言えへんのは辛い。

憂う重岡さんはまるで自分を見ているよう。

やから自分の道筋を考えてみたんや。きっとそれは彼の救いでもあるから。



「一人で抱えるだけの恋なんて、どうしようもなく寂しくて苦痛でしかないって、きっとほんの少し前の僕ならそんな風に考えてました。でも重岡さんが、前を向かせてくれたから」

「……相手を想うからこそ伝えない、か」

「はい。どうでしょ…?」

「ひひ、ええね」



一見綺麗やけど、その実深い自己愛なのだと思う。

僕のそんな考えを見透かしたかのように、「それも一つの愛やね」と笑ってくれた重岡さん。

それならこれで良い。これが、今の僕の進む道。

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杏子(プロフ) - ebifuraistar73さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです!また少し待たせてしまうかもしれませんが、ゆっくり更新していきますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 14時) (レス) id: f0bc5c27fe (このIDを非表示/違反報告)
ebifuraistar73(プロフ) - 待ってました!公開する季節、ぴったりですね。ありがとうございます。 (2018年3月13日 6時) (レス) id: 747d322e1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏子 | 作成日時:2017年9月6日 19時

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