大切な人の席【江戸川乱歩】

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Aside

「人混みで、僕が通れないってときに、僕の手を掴んで一緒に通ったんだけど」

僕はもう布団がなくなって何も出来なくなったので白状している

恥ずかしいったらありゃしない

「乱歩は、目を閉じててって云ってたけど…ちょっとだけ、目を開けた時」

「キュンと来た…と」

「うん、僕のこと判ってるんだな…って」

黒髪ちゃんの黄色い声と髪飾りさんの声が同時に聞こえる

そろそろ布団返して…

恥ずかしくて顔から火が出そう…

「これはくっつくしかないね」

「そうですね！」

話の展開が早いなぁ

さっきよりも顔が赤いような気がする

「もうここに籠城する」

「何でだい？」

「彼奴帰ってくる」

厭でもわかってしまう

一緒に居すぎて、足音だけでわかってしまうのはどうかと自分でも思う

乱歩の陽気な声がこっちまで聞こえてきた

「よくわかったねェ？」

「はぁ…これはこっちまでドキドキしますわ…」

二人のニヤニヤ顔が怖い

美人のニヤニヤ顔って怖いんだ…初めて知った

こっちに来ませんようにこっちに来ませんように

「やっぱり居た！」

来ちゃったよ

「ら、乱歩さん！今はやめときましょう？！」

タレ目君の言葉も聞かずに医務室の扉を開ける

女性二人がタレ目さんを宥めながら、医務室から出ていく

えっ…ふたりっきりですか？

待って二人とも帰ってきて

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