ソレヲ人ハ恋ト言ウ

壱の巻 ページ2

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曖昧な心地、夢と覚醒のはざまで私は思う。

今日もお客が付かなかった。それを喜ぶべきか、喜ばないべきか。

下級遊女は大部屋で雑魚寝。花魁まで位が上がると個室が用意されるのだが、私は下級遊女なので夢のまた夢の話だ。

隣でどうどうと行為をしていたこともあり、昨夜は寝た気がしなかった。

「さて、また寝るか。」

お客が付かない遊女の一日はとてもつまらない。

今日の昼見世までは何をして過ごそう・・・。花札か、それとも和歌を詠むか。

「和歌！お風呂行かない？」

「おっ、いいねぇ。吉原の湯屋に行こう。」

少し着物が乱れて、呼吸が荒い同僚を横目に、私は湯屋に向かった。








なぜか辺りが妙に騒がしい。花魁達も動揺しているようだ。

「なぁ、藍。今日は吉原でなにかあるのか？」

「和歌、知らないの？？今日は大大名様と大御所様がくるのよ。」

大御所・・・徳川家康公のことか。新たな側室探しの為に吉原を訪れると考えた方がいいだろう。

それと、大御所の家臣らしき大大名。供に吉原に出かけるということは、嫁探しか？

なんにせよ、買ってもらえる機会が出来たということだ。運が良ければ吉原から出られるかもしれない。

「吉原から出られるチャンスよ！頑張って目をかけてもらうわ！」

まぁ、運が良ければの話だ。大御所の側室になる気はないし、大大名の嫁になる気もない、

ただ、禿として小さい頃に吉原にやってきた私にとっては、外の世界というものは気になるがな。

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