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卅肆の巻 ページ45






宴会が終わった晩の夜。私は渉様に召しだされて渉様がいるお部屋に向かった。

名目上は渉様のものだ。いくら渉様に下心がないとしても、渉様と一夜を過ごさなければならない。

遊女時代に何度も経験してきたというのに、今更躊躇ってもしかたない。

「あ、和歌ちゃんやん。どこいくん?こんな夜遅くに。」

そういって私の前に立つ赤髪の男は坂田。今日の宴会ではお酒が飲めない渉様にたくさん飲まされていたのに、彼はお酒が強いのだろうか。センラはお酒に飲まれていたが。

「あぁ、渉様のところにな。」

「へぇ、召し出されたんか。初日からようやるなぁ。うらさんもなかなか積極的なんや。」

そういってひゅうと口笛を吹く。からかってんだかからかってないんだか。よくわからない野郎だ。

「あっそ、」

「和歌ちゃんも気を付けた方がええで、狼はいつくるか分からへんからな。」

さっきまで口笛を吹いておちゃらけていたとは思えないほどの真剣な顔つき。朱色の目はしっかりと私を捉えているのが良くわかる。

なぜそこまで、なぜそこまでさっき会ったばかりの女子を心配してくれるのだろうか。元遊女だからかだろうか?それにしても、渉様のものだという名目の私を心配したりはしないはず。

ましてや坂田が世話焼きだとは今までの態度から見てもそうは思わない。いったい、なんで。

そうぐるぐると考えを巡らせていたら、返事をすることを忘れていたらしい。

「ぼーっとすること多いねんな。ほんまきぃつけてや。」

そういって頭を撫でて去っていった。よくつかめないやつだ。読めないやつ。

でもこんなに優しく頭を撫でられたことは久しぶりだ。意外と人を心配する性格だったのかもしれない。たった一日しか一緒にいなかったのだから、坂田の性格を完璧に理解できないのも無理もないだろう。完璧に理解できている方が気持ち悪いかもしれない。

昔、兄に頭を撫でられたときみたいに、優しい優しい手つきで・・・・。

耳が熱くなるのがわかる、渉様の部屋へ向かう前にこんなことが起こってしまうとは。油断してしまったようだ。

とにかく、明日からの坂田との付き合いは少し見直した方がいいかもしれない。早く渉様の部屋へ行きたい。だが、私の思いとは裏腹に頬や耳に集まったほとぼりはなかなか冷めてくれなかった。

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設定タグ:歌い手 , 和風 , 浦島坂田船   
作品ジャンル:恋愛
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球  
作成日時:2019年7月20日 20時

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