拾壱の巻 ページ13
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周りでは行為を行う声が聞こえる。女の啼き声、着物の擦れる音。
遊女は感じてはならない、との暗黙の了解なのに、気持ちよさそうに啼いている奴もいる。
「和歌。気になるか?」
「ええ、そりゃあ。普通ならそういうための部屋ですので、仕方がないとは思いますが。」
目の前にいる浦田様は満足そうに微笑んだ。なにに満足したんだか。
今までかぶっていた深くて幅広な帽子を取り、浦田渉としての顔をあらわにする。
浦田渉、浦田家嫡男と名乗ったこの男は私が知らぬはずがない。大大名のお子だから。
私の実家は中大名だが、うちの父親が落ちこぼれすぎて話にならなかったからな。結局、父親の代で陥落。今は話を聞かなくなったから、いったいどこまで落ちたのか。
陥落する前に断腸の思いで私は吉原に送られた。最後の砦だったというわけさ。
「じゃあ俺らもやるか?」
「・・・・・・・正気でございますか?」
「遊女のくせにそんなことを言うのか?今、俺がお前を襲ってもお前は何も言えないんだぞ?」
何言ってんだこいつ、女に興味のない顔をしておいて実は飢えていたのか?
いや、今までの言動からしてそれはないと思いたい。だが、遊女の私には何もできない。ましてや下級遊女が。
「それは・・・・」
口ごもった私を見下ろすようにして壁に手をついた。翡翠が私を捉えて離さない。
そのまま私のあごに手を添えて、くいっと少し上に持ち上げた。浦田様は楽しそうに笑う。
「これだけでも動揺か?さっきまでの威厳はどうした。お前は頭が良いのだろう?」
いつのまにかそなたからお前に。何か変なスイッチを入れてしまったかもしれない。
「大変お楽しそうで。」
「案外冷静だな。じゃあ、もっとやれるな。」
そういうと、浦田様は私の首筋を舐めた。悔しいが少し反応してしまった。
勿論感じてはいない。だが少し、よい気分になってしまった。なかなか味わうことのない、他の客とは違う気分。
「ここでもう一度聞くが、本名は何だ?」
「答えなかったらどうなりますか。」
「もう一度舐めるか、次は口かな?」
こいつ、間違いなく楽しんでやがる。と私は思ったが、内心「飢えてなくてよかった。」とほっとした。
が、答えなくてはそろそろ危ない。襲われる、ときゅっと口を結んで、少したってから開いた。
「伊万里・・・・・A・・・・・」
「伊万里・・・。姫か、お前は。」
続く
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時