主大好き打刀に成ったのでサッカーをしながら主を探そうと思う (ページ4)

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「サッカー選手になる為にサッカーをしなければいけない。だからサッカーを教えろ」
「？何で俺が｣
「お前がサッカーをしてるからだろう｣
「確かにしてるが｣

絵心は突然上から話しかけてきた長谷部に対して嫌そうな顔をする。絵心はいつも輪から抜け出して一人で黙々と遊んでいるような不思議な奴だった。
先生の教えた通りにする事が嫌いで、皆と同じ正解に何で？と思うような子だ。

この日初めて長谷部は絵心に話しかけたのだが物静かな様子にしては生意気な目をしているなと思う。
考え込むように黙る絵心から視線を外した長谷部は目の前の砂の城に先程までセッセとつくっていた泥団子をのせた。砂の城に球体が置かれた。これに長谷部はヨシと満足した。それを眺めながら絵心は「で」と続きを促す。

「サッカーをしたいと言っていたな。何故だ｣
「主を探すため｣

長谷部は馬鹿正直に理由を答えた。
絵心は主？と一瞬固まるも直ぐにそうかと視線を反らす。

「玉を蹴るだけに何の魅力があるのか分からんが」

ここで長谷部、余計な一言を付け加えてしまった。
絵心はこれを聞いてハ？と顔を上げた。絵心は怒っているようだった。長谷部は突然キレた絵心が不思議だった。
何で怒ったんだこの男とプリプリしながら室内に向かった絵心の背中を眺め、長谷部は「何故」とちいさく呟いた。

長谷部は焦った。
だってサッカー選手になるにはサッカーを知らなきゃいけない。絵心に教えて貰わないとサッカー選手になれない！
長谷部は身近にサッカー少年が絵心しかいなかった為、彼じゃないとダメだと思い込んでいた。
だって絵心はサッカーしてるから。

長谷部は怒った絵心を追いかけた。「おい」「無視をするな。おい」と話しかけても絵心は無視だ。それから長谷部は頑張って絵心に話しかけ続けた。
絵心は無視をするけど、長谷部は構わずに話しかける。
遂にはいつも絵心の隣に居座るようになり相槌も返答もない彼に向けて一人でぺちゃくちゃと話している始末。

そんなふうにしていると絵心と長谷部はニコイチとして扱われるようになっていた。おしゃべり長谷部と何も言わない絵心。だけどずっと二人でいる不思議な子達。
周囲からそう認知され始めて少しした時である。絵心はついに「うるさい」と長谷部に向けて言葉を投げたのだ。

長谷部はこれに「！俺がうるさいんじゃない。お前が静かすぎるだけだろう」と返した。言葉は無愛想だがその顔はニコニコである。