主大好き打刀に成ったのでサッカーをしながら主を探そうと思う (ページ1)

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幼稚園・お昼ご飯を食べていた長谷部は小さなスプーンを握りしめたまま突然カッ！と目を見開いた。
長谷部は五歳になったばかりの子供だった。お父さんよりもお母さんが好きで、体を動かす事が好きなヤンチャな子。

しかしその長谷部は長谷部の仮の姿であった。
なぜなら、長谷部はたった今前世の記憶を思い出したからである。プリンを1口食べる。口の中に広がる甘味にウムと頷きながら、長谷部は自分が刀の付喪神であった事、時の政府と呼ばれる歴史を守る機関があった事、自分はそこで主の元日夜戦いに興じていた事を思い出す。

確か長きに渡る歴史修正主義者との戦いが幕を閉じ、長谷部達は元の本刀に戻る事になった。
主とじゃあねをして長谷部は戻ったはずなのにな、と周りをチラと見渡す。自分と同じように小さな子供たちが一生懸命頬をふくらませてご飯を食べている。
その近くでは先生が周囲に視線を向けながらもお世話をする、先程までは何とも思っていなかった光景だ。

どうやら、己は人間になってしまったらしい。
プリンを食べながら長谷部は頷く。人間になってしまったものはしょうがない。長谷部は長谷部になる前は人間だったので驚かない。元に戻っただけだから。なので特に衝撃も戸惑いもなく長谷部は現状を受け入れる事が出来た。
そっか、人間か。人間ならもしかしたら主いるのかな。

「……探すか」

どうせやる事ないし。
長谷部はスプーンを置くとその場に立ち上がる。
それを見ていた先生たちが「長谷部くんどうしたの」と近寄ってくるが長谷部は「トイレ」と可愛く言うと先生に連れられてトイレに向かうのだ。
長谷部は見守っている先生からバレないようにトイレから逃げ出すと(刀剣男士なので容易)とトトトと園から脱出するのだ。

主はどこだろう。
俺の主、待ってて下さいね！と意気揚々と走っていた時である。前方の角から清掃員のおじさんが飛び出してきたのである。長谷部は思わずその場に止まると、おじさんは「あれあれ」と長谷部を見て驚いていた。
そりゃそうだ。園児が一人で園の外にいるのだから。
結局、長谷部は脱出する事が叶わずただ先生達を困らせただけである。