繧、繧ュ繝舌ヮ繝翫う繝ヲ繝薙し繧ュ ページ9
今夜、きっと刀也はここに来る。そんな根拠の無い自信だけで、私は箱庭から出る準備を始めた。……けれど、何が必要かなんでさっぱりで。鞄一つ持たない私は、途方に暮れて、今までどれほどカナエに頼って生きてきたかを痛感する。
そんな私を見かねてか、葛葉はリュックを私に差し出した。ずしりと重く、葛葉は端的に中身を説明してくれた。
「最低限だけど無いよりマシだろ」
「ありがとう。……あ、お礼。でも私何も持ってないから、今できることとかあったら……」
「__ならお前の……やっぱいいわ。いらね」
「えぇ!?」
どうせ美味くねぇし。
彼は大雑把に私の頭を撫で回すと、そのまま背を向けた。これで本当にお別れになってしまうのかと思うとどうにも心臓が軋んで、それを解消しようと声を出した。葛葉!その大声に自分でさえびっくりして、言葉が喉につっかかる。彼は歩みを止めた。
「カナエを、よろしくね」
葛葉は返事をせず、背中越しにひらひらと手を振った。それに振り返して、私はぎゅ、と拳を握った。
辺りを警戒しながら、私は外への扉に手をかけた。グ、と力を入れる。あえて振り返らなかった。私は今から全てを、捨てるんだから。さよなら、世界。
さよなら、カナエ。
「A」
「っ!?」
「そのリュックどうしたの?」
「く、葛葉がくれたの!これで薬草つんでこいって、」
「こんな夜中に?」
言い訳が見つからず言い淀む私に、カナエはなぜか追及しなかった。そして、ふと笑う。
「ねぇA。明日、僕と教会の外に行ってみる?」
……え?
「バレなきゃいいさ。……どう?」
それは今までの私たちをまるで否定するような、そんな言葉だった。だってカナエは、私を外に出さない為に、監視する為に、ここにいるのに。私に手を差し伸べたカナエが、途端に分からなくなる。でも、答えは一つだった。だってカナエを縛るのはいつだって私で、そして私が選んだのはこの世界じゃない。
「ううん、行かない」
カナエは僅かに唇を結び、分かったと言った。おやすみと私を抱きしめ、部屋の奥へ消えていく。姿が見えなくなると、胸を撫で下ろし、深呼吸。再び扉へ手をかける。
今度こそ。さよならってドアノブを捻った。
トウヤはいつもの場所にいた。現れた私に心底嬉しそうな顔をして、手を差し伸べる。それを取ると、叶を選ばなかった後悔なんて、一つも湧かなかった。
こうして、私たちの逃避行は始まった。
【マリカ杯】今年はさん味ほど違うがやはり名が上がる雲桜【にじさんじ】→←分かってないよ、君はずっと
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シィ(プロフ) - きゃーなんて綺麗な声ではなく悶えるような声を発しながら楽しく読んでいたら気づけば無言で涙ボロボロで読んでました。後日談とか勝手に考えてさらにもーッ!!!って気分です。最高でした。 (4月2日 2時) (レス) @page49 id: 45c181e6d5 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 数時間で一気読みしました。長い長い映画を見たような気分で、ずっと泣いています。「二次創作」や「夢小説」の一言で片付けるにはあまりに勿体ないほどの作品でした。本当にこの作品に出会えてよかった! 現世でも来世でも、さくらもちに幸あれ!! (3月28日 23時) (レス) id: 50bb1a18fa (このIDを非表示/違反報告)
紫月とと - 初めて拝見してから一気見をしてもうボロボロと泣きっぱなしでした笑 こんなにも綺麗な恋があるのだろうか、と夢を見させて頂きましたし、何よりも二人の気持ちが尊すぎました😿🤍 さくらもちに永遠の幸あれ! (3月28日 15時) (レス) @page49 id: 5d87268641 (このIDを非表示/違反報告)
なえ(プロフ) - コメント失礼します。今日(昨日)初めて見てそのまま一気見したのですがここまで大号泣した夢小説は初めてです。軽い気持ちで臨んだのに…とてもよかったです。さくらもちお幸せに! (3月25日 1時) (レス) id: a0bf3e5ea8 (このIDを非表示/違反報告)
るるなる(プロフ) - 完結おめでとうございます、今目の前が見えないぐらい号泣しているのですが、、。幸せな気持ちでいっぱいです。長期連載お疲れ様でしたこれからも何回も見返します。そしてこれからも150年も幸せであれ!さくらもち!! (3月6日 21時) (レス) @page49 id: e4083c598e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴた | 作成日時:2023年11月19日 17時