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譏・繧偵a縺悶☆蜒輔i ページ17

できるだけ遠くに行こうってトウヤが言った。私も頷いた。馬鹿みたいに浮かれていた。私は浮かれたから、あんな馬鹿なこと言えたんだ。





「マズいな」
「え?」
「Aさんこっち!」



手を引かれ木の影に押し込まれる。ぎゅうって潰されるほど彼の胸に丸め込まれ、じっと息を殺していた。私の耳は木の葉がそよぐ音以外を拾わない。でも、トウヤの耳はきっと大量の情報を随時処理していたのだろう。程なくして、力が弱まった。ぷは、と無意識に止めていた息を吐く。トウヤは私を抱きしめたまま、目にかかった前髪を指先でよけた。



「すみません、突然。もう大丈夫ですよ」
「……バレちゃった?」
「予想通りです。でも、このスピードは予想外でしたね。教会も権力にふんぞり返った馬鹿ばかりじゃないってことか」



トウヤの瞳が闇夜に赤く光っていて、私は呑気にその瞳に見惚る。全部が夢みたいで現実味がなかった。



「さ、行きましょう。この死の森さえ越えたら、もう貴方は自由です」
「ここって聖女の森じゃないの?」
「それはこの国の人々がつけた俗称みたいなものです。僕がいた国では、こんなおぞましい名前で呼ばれてますよ。だから誰も近寄らない。それが今は好都合ですけどね」



トウヤが笑うから、私の心は、弾んで今にも飛び立ちそうだった。だから。



「この森を抜けたら、トウヤのものになってあげてもいいよ」



いいよ、なんて強がりだった。なんであの時、私。好きだよってそんな簡単なことさえ、言ってあげられなかったんだろう。






____ダン、って音がした。



トウヤが目を見開く。私の耳が音を拾う前に、トウヤが覆いかぶさって地面に引き倒された。一瞬の出来事だった。私はぽかんとしてしまって、訳も分からず体を動かそうとしたけど、それよりも強い力でトウヤが私を抱き込んだ。さっきよりもずっと小さく小さく、視界は真っ暗で、耳に届くのはドクドクと鳴るトウヤの心臓と、…………ダンって何回も、同じ音が鳴っていた。


ふと、視界が明るくなった。そして目を瞬く間にトウヤが私を抱え、木々の合間をぬいながら奥へ奥へ。もう少しで、森の外だった。もう少しで、私たちは自由だったのに。銃声を知らない愚かな私は、突然トウヤが倒れた理由が分からなかった。


トウヤが倒れる前に、私は地面に放り出されたから下敷きにはならなかったけど、トウヤ、と名を呼ぶ。彼は何とか立とうとしていたけど、その息は苦しげに震えていた。

證苓サ「→←その強さが



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作品ジャンル:ラブコメ
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シィ(プロフ) - きゃーなんて綺麗な声ではなく悶えるような声を発しながら楽しく読んでいたら気づけば無言で涙ボロボロで読んでました。後日談とか勝手に考えてさらにもーッ!!!って気分です。最高でした。 (4月2日 2時) (レス) @page49 id: 45c181e6d5 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 数時間で一気読みしました。長い長い映画を見たような気分で、ずっと泣いています。「二次創作」や「夢小説」の一言で片付けるにはあまりに勿体ないほどの作品でした。本当にこの作品に出会えてよかった! 現世でも来世でも、さくらもちに幸あれ!! (3月28日 23時) (レス) id: 50bb1a18fa (このIDを非表示/違反報告)
紫月とと - 初めて拝見してから一気見をしてもうボロボロと泣きっぱなしでした笑 こんなにも綺麗な恋があるのだろうか、と夢を見させて頂きましたし、何よりも二人の気持ちが尊すぎました😿🤍 さくらもちに永遠の幸あれ! (3月28日 15時) (レス) @page49 id: 5d87268641 (このIDを非表示/違反報告)
なえ(プロフ) - コメント失礼します。今日(昨日)初めて見てそのまま一気見したのですがここまで大号泣した夢小説は初めてです。軽い気持ちで臨んだのに…とてもよかったです。さくらもちお幸せに! (3月25日 1時) (レス) id: a0bf3e5ea8 (このIDを非表示/違反報告)
るるなる(プロフ) - 完結おめでとうございます、今目の前が見えないぐらい号泣しているのですが、、。幸せな気持ちでいっぱいです。長期連載お疲れ様でしたこれからも何回も見返します。そしてこれからも150年も幸せであれ!さくらもち!! (3月6日 21時) (レス) @page49 id: e4083c598e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴた | 作成日時:2023年11月19日 17時

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