【金カム】愛で満たして【短編集】 (ページ8)

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月島さんは私の左手首を掴んだまま、持っているカッターの刃を私の指に這わせる。
いつ切れてもおかしくない。そんな状況で、汗ばんだ手に力すら入れることができなかった。

「 …もっと、その顔を見せてください。」

私は涙が溢れて、ぐちゃぐちゃになった顔を彼から逸らしている。
月島さんの言葉に耳を傾けず、ずっと目を合わせないようにしていれば、鋭い痛みが走る。

「ああｯ、い、たい。」

「 …こっち、見てくれないんですか。」

咄嗟に彼を見てみれば、私の反応を楽しむように笑っている。私の左手は、強く押し込まれるカッターの刃のせいで血が流れている。

「早く止血しないと、あなたみたいな脆弱な人は貧血でも起こしかねませんね。」

「な、なんでこんなこと…、するんですか、」

「なんで。…今日が何の日かご存知ですか。」

「クリスマス、イブ。」

私の言葉を聞いて、月島さんはカッターを床に置いた。
顎を掴まれ上を向かされる。彼と自然に視線が合う。

「 …わかってるなら話が早い。私は、ブラックサンタですよ、Aさん。」

「なにそれ…、」

「悪い子は、懲らしめないと。

Aさんは、いつも薄着ですよね。誘惑してるんですよね、私のこと。」

「ち、ちがｯ、そんなんじゃ」

月島さんは、にやりと笑いながら私の話なんて聞こえてないような色を見せる。
いつもの優しい目じゃない、憂いを帯びたその真っ黒な瞳は獲物を捉えた狩人のものだ。

「 …どうやって、お仕置きしましょうかね。」

そう言って彼は、手首を掴んだまま私を立たせて腰を抱く。
密着した下半身に違和感がある。
ああ、やばい襲われるか、殺される。

ブラックサンタは、私に制裁を与えた。

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