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漸く大通りに出ることが出来、賑わいが晴太を安心させた。
走っていた足を緩め、歩き出す。
掴まれていた手は自然と離れ、前を歩いている喜杏に晴太は戸惑いながらも口を開いた。
「あ、あの……ありがとう」
「……別に、いい」
続かない会話。気まずい空気。
新八や神楽は歳が少し離れていても気さくに声を掛けてくれたりして話しやすい。
しかし、喜杏は歳が一番近い筈なのにずっと壁があるようで、ずっと避けていた。
助けてくれたことは本当に感謝しかないのだが、何を思われているか不安である。
大通りを抜け、スナックお登勢も目の先になったとき、喜杏は晴太と向き合い、頭を下げた。
そして。
「______ごめん」
突然のことに驚いた。
「え、な、なんであんたが謝るんだよ。おいらが迷惑……」
「そ、そうじゃなくて」
「?」
言い辛そうな顔をしながら視線を外す彼女に疑問を持つ。
先程のことじゃないならば一体。
「嫌な態度、ばっか……取ってごめ、ん」
「あ……」
壁があると思っていたのは間違いではなかったようだ。
もしかして、先程裏路地にいたのも自分を追いかけてきてくれたからだろうか。謝るためだけに。
でないと、たまたまあんな所にいるわけがない。
「べ、別に気にしてないやい」
いや、気にしていていないわけではないが。それでも伝えたい。
「あんたさっき助けてくれたし。それに、おいらも避けて、たし」
「……」
喜杏は黙って晴太の話に耳を傾けた。
どうして彼女が自分に壁を作っていたのか、正直分からない。
でも、こうやって謝ってくれるだけでいいじゃないか。おいらだって、何も知らないのに避けていた。同罪だろう。
「だ、だから……」
おいらは真っ直ぐ手を伸ばした。
「と、友達になってくれよ。歳が近い友達、いたことないんだ」
照れくさくなってきた。顔の温度が上がってきたように、変な汗が垂れてくる。
間違えてしまっただろうか。
すると、ぎゅっ、と手を握られた。
「うん」
喜杏の口元に浮かんだ笑みは綺麗だった。
と、同時に晴太は嬉しかった。
「じゃあ、喜杏ちゃんって呼ぶから!!!」
「いいけど……」
喜杏がおいらを避けていた理由は正直分からないが、以前のような壁は感じなかった。
スナックお登勢までの短い距離、もう既に晴太は恐怖を忘れ、満面の笑みが浮かんでいた。
そいや、さっき何やったんだよ
何って、どついた?
なんで疑問形⁉マジで何やったの!!?
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時