貴方の傍に-9-【銀魂】

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「……何、言ってるんだ」

晴太にとって今精一杯の返答だった。発した声は思った以上に掠れている。
扉の先にいる、今まで手を伸ばした母親は。育ての親が振り絞って残してくれた母の姿は。

鳳仙の口は開いた。



月詠が言っていた通り、遊女が子を産めば母子ともに殺される。

しかし、そもそも誰にも露見することなく産めること自体、不可能なのだ。
それを可能にしたのは遊女達が匿ったからであった。

そして密かに子供を取り上げたが、実の母親は衰弱死。

「残念ながらそこにおるのはお前の母親ではない。

母に憧れながら、しかし母になることも叶わない。
母親ごっこに興ずるただの哀れな遊女だ」

鳳仙の淡々と告げる言葉に呆然としてしまった。

「……どうして、こんな所に来ちまったんだぃ」

泣きそうな声がまた晴太の耳に届いた。
日輪の願いはずっと変わらない。晴太が地上で生きてくれさえいれば。
それだけで十分だったのだ。

今まで騙し続け、願い続けた子供を結局危ない目に合わせてしまった。

日輪は膝に乗せたを手を跡が残るほど握りしめた。




ドン



ドン

何度も扉にぶつかることがまた響きだした。

「母親ならいるっ、ここに!!!」

びくりともしない扉に何度も。

「おいらの母ちゃんならいるっ、ここに!!!」

それでもこの扉が開くまで、体が悲鳴を上げても何度だってぶつかってやろう。
常夜の闇から地上に産み落としてくれた、命を張っておいらを産んでくれた貴方を救い出す為なら。


喜杏ちゃん、本当はおいらもしょうもない嫉妬をしていたんだ。

血のつながっていない喜杏ちゃんと銀さん達を見ているとどこかむしゃくしゃしていたと思う。
あの日、君だけが謝って、図々しく友達になってくれ、って言ったけど。
本当は謝らないといけなかった。
でもさっき君が本気で胸倉掴んでくれたから、ちゃんと母ちゃんに会わないと、って思ったよ。

だから今度は紹介する。おいらの母ちゃんはこの人だって。
君が銀さん達を本当の家族だと思っているように。この人がおいらの家族だって。

自信をもって、胸を張って言うんだ。

「おいらの母ちゃんはこの人だぁぁぁ!!!」

その言葉に共鳴するかのように一本の木刀が勢いよく扉に刺さった。



「おいおい聞いてねぇぜ。吉原一の女がいるっていうから来て見りゃ」

その勢いで鍵が壊れ、扉がゆっくりと開く。

「店長、新しい娘頼まぁ。どぎついS〇プレイに耐えれる奴をよ」

銀色の侍がにやけた笑みを浮かべた。

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