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神楽は感じてしまった。
喜杏と新八を不安を抱かせてしまった。
きっと怖かっただろう。暴走する夜兎に近づくなど本来は自〇行為に近い。
「新八、喜杏」
それでも、近寄って手を差し伸べてくれた二人に神楽は呟いた。
「どす黒い闇の中で……二人の声が聞こえたアル」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえた瞬間、二人の温度もじわじわと伝わった。
それは一筋の光になり、私を導いてくれた。
「私を護ってくれたのは……喜杏、新八。
……お前達アル」
神楽の頬に一筋涙が流れた。
悔し涙だった。
あれほど成す術がなく、護りたいものも護り切ることが出来なかった自分に対して腹がたった。
自分が弱いから、本能にも負けた。弱いから大切なものを危険な目に合わせた。
大切なものが手から零れ落ちそうになった。
「私……もっと強くなりたい」
涙と零れ落ちた言葉は神楽の本心だった。そしてその言葉は二人に真っ直ぐ届いた。
「……僕もだよ」
「……私も」
喜杏と新八は立ち上がった。
「でも今立ち止まっている暇なんてないだろ。こんな僕らの力も必要としてくれている人達が今いるんだ」
喜杏は神楽の左側に回り、神楽の背中を支えて起き上がらした。まだ目が潤んでいた神楽の頬からぽろり、と涙が落ちる。
新八は通りやすくする為に木製の手すりを蹴り壊すと、神楽の傍にしゃがみ込み、腕を首に回させ立ち上がらせた。
「いつだって何かを護る度に、ちょっとずつだけど僕ら
強くなってきたじゃないか」
だから、涙を拭いていこう。
これからも大事なものを護るために。
今、目の前の大切なものを護るために。
立ち止まるのではなく、一歩を踏み出すんだ。
そしたらきっとまた。
「僕ら、また一つ強くなれるさ」
今度こそ、失わないため。
また四人と一匹でいつものように馬鹿やって笑い合う為にも。
彼らは踏み出した。
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時