貴方の傍に-9-【銀魂】

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何故こんな所に夜兎族が。
喜杏が夜兎族を見るのは三回目だった。

絶滅危惧種とされている一族が何故。
嫌な汗が頬を伝う。

「どうやら折角用意してくれたあんたの逃げ道も手が回っていたようだぜ」

「違う」

銀時の言葉に月詠は即座に否定した。

「あれは、鳳仙の回し者じゃない」

「餓鬼を寄越せ」

たった一言。同時に放たれた殺気は一瞬で体を強張らせる。

「ぎ、銀ちゃんやばいアル」

震えた声で、敵から目を離さず神楽は口を開いた。

「あいつ、と、とびきりやばい匂いがするネ。
血の匂い。幾多の戦場を生き抜き、染み込んできた血の匂い。



本物の“兎夜”の匂い」

弱肉強食。神楽は自身の体が逃亡したいと震えているのに気付く。
同族だからこそ、気付いてしまった。
計り知れない目の前の恐怖に。

生唾を飲み込んだ瞬間、敵は晴太に手を伸ばす。
月詠は即座に大量の苦無を浴びせた。
番傘で全て塞がれるが、敵に死角ができた。

その機会を逃さず、月詠は後ろに回り込み、苦無を投げる。

「なっ!!!」

苦無を口で咥えられ、攻撃を防がれた。
驚いている間にも月詠は顔を掴まれパイプに叩きつけられた。

「つ、月詠さん!!!」

「早く!!!今のうちに逃げろ!!!」

月詠が叫ぶと今度は下から連続した攻撃が。パイプの下に何か…!!!
喜杏は晴太の手を掴んで引き寄せた。
足場が不安定になった瞬間、銀時の腹に重い攻撃が入る。

「ぎっ、っ!!!」

何かに胸倉を掴まれ銀時の下に放り投げられた。
銀時はぶれる視界の中、飛んでくる喜杏を受け止める。

銀時に受け止められた体はどこも痛くはないが。

……しまった、晴太!!!

思わず晴太の手を放してしまった喜杏が顔を上げるとその先には夜兎がもう一人。

「放せっ!!!」

夜兎に裾を掴まれた晴太が抵抗するがぴくりとも動かない。
神楽が駆け出した。晴太が連れていかれる。絶対にさせない。

「どいてくれよ」

聞き覚えのある声が神楽の耳に届いた。
その声を最後に聞いたのは確か雨の日。どんよりと重たい雲が神楽の記憶に浮かぶ。

そうどれだけその背中に叫んでも、戻ってくれることはなかった。
最後に言い残した言葉が記憶の声と重なる。

「弱い奴に用はない」

振り返った先にいたのは。



「にっ」



叩きつけられた。その力はパイプが破壊されるほど。
神楽の体が真っ先に落ちていった。神楽を掴もうと銀時は手を伸ばすが、届かない。
しかも、銀時達も成す術がないまま、闇へと落ちていった。

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