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晴太は捨て子であった。
物心が着き、思い出を振り返っても思い出すのは自分を育ててくれたじいちゃんの顔だった。
言葉を教えてくれたのも、遊び方を教えてくれたのも、貧しい生活の中でもじいちゃんは自分の為に遅くまで働き、育ててくれた。
しかし、その育て親のじいちゃんも三年前に病気で死んでしまった。
かろうじて呼ぶことが出来た医者にはもう手遅れだと、今夜が山だと言われ、看取ろうと布団の傍でずっと座っていた。
意識が朦朧としていたじいちゃんが最後自分に言ったのだ。
「自分を恥じるな。
お前は捨てられたんじゃない。“救われた”んだ。
命懸けで闇の中から救ってくれた」
晴太のおじいさんは、母は常夜の闇に一人日輪如く燦然と輝いている。そう言い残して息を引き取ったらしい。
晴太はその情報だけを頼りに探した。探し続け見つけたのが吉原で今もなお美しい花魁の姿だった。
「……あの人、おいらの母ちゃんかもしれないんだ!!!」
漸く辿り着いた存在は全く手の届かない場所にいた。いくら声をあげても、手を伸ばしてもまるで届かない。
少しでもいいから話がしたい。あの人に会いたい。
客としてなら、話すことが出来ると考えた。
しかし、金など持っていない。まだ、子供である晴太が稼げる手段も限られる。必死で手に入れたお金は綺麗な物ではなかった。
泥棒のような真似ばかりして手に入れた物ばかりだった。
それでも。
「会いたいんだ。会って……話がしたいんだよ」
机にぽたりと涙が零れた。
沈黙を破ったのはお登勢の溜息だった。晴太の肩が跳ね上がる。
「本末転倒じゃないか。母親に会う為にそんな真似をして。母ちゃん喜ぶと思うかい」
「ぐすっ……」
「……働いていきな」
お登勢の言葉に俯いていた晴太の顔が上がった。
「花魁買えるだけの金なんて出しゃしないがね。少しは足しになるだろうさ。
だから」
お登勢は口から煙草を外す。
「掏りなんてもう二度とすんじゃないよ」
働かせてくれる。こんなどうしようもない自分を。
訳の分からない子供の言葉を受け止めてくれた。その事実に晴太は涙が止まらなかった。
「あり、がとう……」
やっと口にできたお礼も涙と共にぐしゃぐしゃだったが、お登勢達の耳にはしっかりと届いた。
銀時も漸く見せた子供らしい一面に少し安心したが、晴太の奥に座っている喜杏が視界に入る。
じっと晴太を見つめている様子が少し気になった。
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月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時