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水柱が立った。
土方が木刀を振り落とす。
それを簡単に北大路は受け止め跳ね返した。
愛も変わらぬ一辺倒な剣筋である。
どんなに攻め込んでこようとでかい皿を背負う限り、土方は後手に回らざるをえない。
北大路は自分が皿に打ち込む気配を見せれば必ず土方は守りに転ずる筈だと考えていた。
それが例え擬餌だと見据えていてもだ。
北大路は土方の懐目掛けて一手を打った。
餌だ、喰いつけ。その隙を自分は攻め込み、完全勝利を狙うために。
しかし、土方の太刀筋は北大路を上回った。
一直線に振り落とされた土方の木刀。脳が揺れる感覚になんとか意識を戻そうとする北大路は不安定な水場で身体を起こした。
「やっすい餌はもう食い飽きたぜ」
力強く握り締める木刀、腰を落とし構えた。
「俺を釣りあげてぇなら、
擬餌ごと巻き込む連撃に北大路は防戦一方であった。
何度も何度も斬撃が振り落とされた。
猛攻をかけ、余計な小技すら出す暇を与えない、攻撃こそ最大の防御である。
近藤は漸く土方らしくなってきたと述べた。
「一気にカタをつけるつもりか……!
だが、このような足場で無理に攻勢に出ても動きは制約され体力は消耗するだけ」
剣が交わる音が何度も響き渡る。
「俺には貴様の剣筋が手に取るように読める!!!
勢いに任せるのみで変化のない単純な攻撃……!
幾ら打ち込んでも俺に一太刀浴びせるのは無理な話……!?」
ぐらりと北大路の体が傾いた。
土方が水中で北大路の足を蹴り倒したのだ。
「剣筋は読めても水中の足の動きは読めねぇだろ!!!」
バランスを崩した瞬間に土方は木刀を振り落とした。
しかし、北大路は両手で自らの木刀を支え土方の太刀を受け止めた。
「型にはまっていると言っていたが、俺から見れば貴様も充分型にはまっている」
北大路達はあらゆる型を幾千幾万も身体に叩き込み、対応策も叩き込んでいる。
つまり、土方の鋭い勘や直感よりも確かなものであり、やり合えばそこには寸毫の判断の差が生まれると北大路は述べた。
そして、その差は致命的なものである。
「それが貴様と俺の差、才能に溺れ努力を怠ったが貴様の敗因」
土方の頬に北大路に太刀がぶち当たる。
またも形勢逆転となってしまった状況に新八は応戦しようと一歩前へと出た。
「すまん、手は出さんでやってくれ」
しかしそれを止めたのは近藤だった。
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月見ソウ(プロフ) - 真代さん» 真代さんお久しぶりです!祝ってくださってありがとうございます。柳生篇はギャグも多いのに考えさせられるお話ですよね。それを表現出来てるか不安ですが、楽しんで貰えたら嬉しいです。応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2021年5月6日 12時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - ください! (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - 「貴方の傍に」シリーズ、一周年おめでとうございます!!物語は現在、柳生篇ですね。守りたいもの、取り返したいもののために、強敵と戦う話ですが、この戦いを通して、どう変わっていくのか、また、主人公はどうなっていくのか、楽しみにしてます。連載頑張って (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - みうしさん» コメントありがとうございます!1年も書いときながらまだ4巻なんで、申し訳ないです。嬉しく思ってくれること、本当にありがとうございます。今のうちに話を更新していきたいと思ってますのでよろしくお願いします。 (2021年4月28日 17時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 一周年おめでとうございます!一年間も書き続けてくださっている月見ソウ様には感謝の気持ちでいっぱいです。この作品が更新される度に嬉しくなっています…wこれからの話の展開も楽しみです。更新陰ながら応援しております! (2021年4月28日 0時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2020年12月11日 23時