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ピルルルル。
緊迫した雰囲気に似合わない音が鳴り響いた。
その原因は勝男の懐にある携帯だった。
「あ"あ"あ"!!!
め、メルちゃんが……!!!わしのいぬ間にママになってしまいよった!!!」
その言葉に一瞬でお祝いの雰囲気になる溝鼠組。
その様子に唖然となる喜杏と新八。
なんなんだ、一体。
溝鼠組は倒れている者も必死に身体を起こし、全速力で消えていった。
……本当になんだったの?
そう思うのも無理はなかった。
漸く一息つけたかのように八郎は大きく息を吐いた。
「あの、皆さん。ありがとうございました」
ぐいと袖口で口元を拭う様子に喜杏はポケットに入っていたハンカチを八郎に渡した。
「あ、すみません」
「おい、気をつけろよ。母ちゃんの前で死ぬような真似するんじゃねぇよ」
「母ちゃん?」
「惚けんじゃねぇよ」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
新八と顔を見合せると新八が少し強めに言葉を出すと。
「いや、だってオラの母ちゃん一年前に死んでるんで」
________________
銀時達は人の波に逆らいながらも夜のかぶき町を歩き回る。
おばさんが何処にも姿がなく、溝鼠組に捕まったのではないかと。
おばさんの目の前で八郎を死なせてしまっては悪いと思ったから銀時達は助けたのだが、実は写真と瓜二つな人物が本当の八郎ではなかったのだ。
八郎は源氏名で、本名は花子、元娘であり、おばさんとは無関係な人物だった。
おばさんの本当の息子は写真とかけ離れた狂死郎だったのだ。
「写真で騙されたね」
「ほんとにな。まさか狂死郎がババアの息子だったとはな。
あんなに変わってたんじゃ母ちゃんでも気づくめーて」
ふぅとため息を吐く銀時。
「狂死郎さん、欠かさずお母様に向けて仕送りをされていたと言います。
なのに何故何も仰らなかったんでしょう……。誰よりも会いたかったに違いないのに」
喜杏は狂死郎の言葉を思い出していた。
得たものより失ったものの方が多い。
恥ずかしい話、親に顔向けできない連中ばかりだと。
恐らく、その連中には自分も含めてそう言ったのだろう。
「しゃーねぇな、片足突っ込んじまってんだ。
ここでババアに死なれても後味悪い」
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月見ソウ(プロフ) - 真代さん» 真代さんお久しぶりです!祝ってくださってありがとうございます。柳生篇はギャグも多いのに考えさせられるお話ですよね。それを表現出来てるか不安ですが、楽しんで貰えたら嬉しいです。応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2021年5月6日 12時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - ください! (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - 「貴方の傍に」シリーズ、一周年おめでとうございます!!物語は現在、柳生篇ですね。守りたいもの、取り返したいもののために、強敵と戦う話ですが、この戦いを通して、どう変わっていくのか、また、主人公はどうなっていくのか、楽しみにしてます。連載頑張って (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - みうしさん» コメントありがとうございます!1年も書いときながらまだ4巻なんで、申し訳ないです。嬉しく思ってくれること、本当にありがとうございます。今のうちに話を更新していきたいと思ってますのでよろしくお願いします。 (2021年4月28日 17時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 一周年おめでとうございます!一年間も書き続けてくださっている月見ソウ様には感謝の気持ちでいっぱいです。この作品が更新される度に嬉しくなっています…wこれからの話の展開も楽しみです。更新陰ながら応援しております! (2021年4月28日 0時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2020年12月11日 23時