sin,9 ページ10
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『はぁーっ、つっかれたー……』
ベッドに飛び込み、息を吐き出す。少し埃臭いのが、気になるが贅沢も言えない。
あの後、お化けに変身した学園長を狸と一緒に倒して何故か学園の雑用係にされた。タダでここに置いてもらっているんだから、拒否権は勿論ない。
「オイ、オマエ」
『んー、なに？』
「オレ様は礼とか、言わねぇんだゾ」
私の隣で寝転がっていた狸の言葉に何の話だ？と一瞬考えて察した。きっと、さっきの話のことだろう。学園長に、この狸も一緒に学園に置いてくれと頼んだのだ。
『別に、いーよ。私も、ゴースト達追い払ったことお礼言わないから』
「フン！オマエ、名前なんて言うんだゾ」
ボソリと呟かれた狸の言葉に、ちょっと迷って応える。人じゃないモノに、名前を教えるなんていつぶりだろうか。
思ったよりも、警戒心が薄くなっている私を心の中の自分が嘲笑った。
『おやすみ、狸』
「だから、オレ様はグリム様だって言ってるんだゾ!!」
『はいはい、おやすみ……グリム』
この狸の名前を呼んだのも、その暖かな体温に少し落ち着いたのも、全部……この意味不明な状況の所為にしてしまおう。
■■
「おはようございます！お二人共、昨夜は眠れましたか？」
『史上最悪の目覚ましで起きましたけど、ぐっすりとは眠れましたよ』
学園長の言葉に、欠伸を零して浮いているゴースト達を睨む。朝から、ゴースト達とグリムの叫び声で起こされたのだ。この世の何よりも、最悪な目覚ましだと思う。
「それは良かったです！今日は、お2人には学園内の掃除をして貰います！」
私は、魔法が使えないので場所を絞って掃除をするらしい。あの広い学園全てを掃除しろと言われたら、初日から心が折れるところだった。
「良いですか、Aさん。昨日のような騒ぎを起こさないよう、しっかりとグリムくんを見張っていてくださいね」
『グリム、リード付けといていい？』
「オレ様をペット扱いするんじゃねぇ!!」
リードと首輪くらい無くては、こいつを止められる気がしない。学園長の背中をグリムが恨めしそうに見ている。
「ちぇっ……掃除なんて嫌なんだゾ。オレ様だって、カッケー魔法をババーンと使いたいんだゾ！」
『終わったら、図書室寄ってあげるから。とりあえず、学校行ってみよう』
まだ、ブツブツ文句を言っているグリムを掴みあげて学校へと向かう。ｰｰ嫌な予感がするんだけど、気の所為だよね？
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作者名：ちょこもち | 作成日時：2020年4月24日 13時
