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花弁がろくじゅうご ページ30

◇◆


『ぁ、す、すいません!!気にしないでください』


ずっと心の中に抱えていた疑問。でも、口に出す気なんてなかった。なのに。


「私なんか、その言葉を使うのは大きな間違いだよ。現に、君と任務を共にした柱は君の実力を認めている」


その言葉に、振り返ってみれば杏寿郎さんも天元さんも笑っている。しのぶさんも。冨岡さんは目、合わないけど。

まるで本当に、怯えて、逃げているだけの私を認めているみたいで。


「頑張りなさい、A。きっと、君はまだまだ強くなれる」

____「頑張れ。Aならきっと出来るって信じてるから」


お館様の優しく微笑む姿が、あの人と重なって言葉が詰まった。ここまで言われて尚、私は


「下がっていいよ。引き止めてごめんね」

『……いえ』


はい、とは言えなかった。何だか、申し訳なくて杏寿郎さん達の方は見れなかった。



しのぶさんから蝶屋敷に行くように言われ、向かう。幸い本部から、すぐなので迷わずに行けそうだ。


『いてて……うわ、血止まんない』


さっき動いたせいで傷が開いたのか、止まっていたはずの血がまた溢れてきた。ボタボタと地面を汚す血に、ため息を零していると目の前を蝶が舞った。

鮮やかなその羽につい、目で追っていると蝶は細く白い指にとまる。


『カナヲちゃん?』


笑顔のカナヲちゃんが立っていた。蝶と戯れている姿は、絵になっていて思わず声をかけていた。

カナヲちゃんの瞳が私を捉える。その瞬間、カナヲちゃんの顔色が僅かに変わった。


「それ……」

『あ、えっと……傷口、開いちゃったみたい。蝶屋敷ってこっちだよね?』


カナヲちゃんがみていたのは私の腕。こんなにも血を流していたら驚くか。話しかけられた事に少し嬉しくなっていると、待って。と可愛らしい声に呼び止められる。


「あの、これ……」


渡されたのは桃色の可愛らしいハンカチだった。思考が停止する。ーーこれ私使っていいの?え?血がついちゃうよ?

でも。触れたカナヲちゃんの手は暖かくて、


『カナヲちゃんだよね?私のこと運んでくれたの』


足早に立ち去ろうとする彼女の袖を掴んでいた。那田蜘蛛山で気を失う前、微かに聞こえた声は彼女のもの。

カナヲちゃんは何も言わなかったが、きっとそうだ。血を流している私に自分のハンカチを渡してくれるような優しい子だから。


『ありがとう!カナヲちゃん』


その背中にめいっぱいの感謝を込めた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時

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