花弁がろくじゅうよん ページ29
◇◆
「俺は…俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します!!」
炭治郎の強い意志の宿った声が響き渡った。
……結論からいえば、禰豆子ちゃんは人を襲わないという証明が出来たのだ。不死川さんに刺されても、滴り落ちた血を見せられても、禰豆子ちゃんは決して不死川さんを傷つけなかった。
それにしても、炭治郎は凄い。まだ怪我が痛むだろうにお館様や柱を目の前にして高らかに宣言出来るのだから。
(私、何も出来なかったな)
炭治郎が伊黒さんに押さえつけられた時も、禰豆子ちゃんが刺された時も、私は動けなかった。
目立ちたくない、モブでありたい、と願っているのだから何も問題は無いのだが。
(私って必要……ないよね?)
果たして、私は彼らの物語に必要なのだろうか。私がいなくても、炭治郎と禰豆子ちゃんがいればこの物語は進む。それがどんな方向であっても。ーーじゃあ、私がここにいる理由って、
「そろそろ柱合会議を始めようか」
ぐるぐるまわっていた思考は優しいお館様の声に掻き消された。私がぼうっとしている間に、話は進んでいたらしい。
気づけば、しのぶさんが炭治郎を預かると名乗り出ていた。
「では柱合会議を…」
「ちょっと待ってください!!」
炭治郎からすれば、大事な妹を傷つけられたのだから1発頭突きしたいのだろう。
柱にしがみついて離れない炭治郎を隠の人が一生懸命引き離そうとしていた時、何かが炭治郎の額にぶち当たった。
「お館様の話を遮ったら駄目だよ」
そこにあった、小石を時透くんが弾いたのだ。あの石頭の炭治郎が一瞬、気を失うってどんな馬鹿力なのか。
「ホラ!!お前も行くぞ!」
「Aにはまだ話があるからいいよ」
手招きしていた筈の隠の人はすいませんでしたァ!!と謝るとそのまま行ってしまった。……え、私置いてかれた?この状況に?1人で?
「A。伍ノ型まで会得したと聞いたよ、凄いね」
『いえ!そんな……ハイ』
きっとまたあのクソ鳩が報告したのだろう。次、見つけたらつるし上げて天日干しすることを心の中で決めた。
「その調子で君には頑張ってほしい。期待しているよ、A」
お館様の声は優しい。砂糖菓子のように甘く、綿菓子のようにふわふわしている。
先程から腕が痛む。隊服を触れば、ぐっしょりと血で濡れていて気持ちが悪い。痛む頭に、この声は毒だ。だから、
『どうして、私なんかに期待するんですか』
こんな馬鹿げたことを口走ってしまったのだ。
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時