ポアロの店員は暗殺教室出身らしい

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「なんで、なんでっ…。」



彼の焦げ茶色のジャケットをきゅっと握る。



涙を見られたくなくて、胸にぐりぐりと顔を押し付けた。



業『何、泣いてんの？』



「泣いてない…。」



業『フッ…そ？』



クイッと腰を引き寄せられる。



恥ずかしいけど、もう今はどうでも良い。



「なんで…ここに？」



業『あの店員さん…安室さん、だっけ？あの人がポアロに行ってるの見たから家まで行ったんだよ。』



「そしたら居なくて探した、と？」



業『そゆこと。』



また強く抱き締められ、"うっ…"と女っ気の欠片も無い声が出る。



く、苦しい…。



「業、仕事は…？」



業『休み。なんか俺の上司がイロイロやってたらしくてさー？』



"聞く？"と悪い声で囁かれた為、全力で首を横に振っておいた。



業の"色々"の言い方からして多分お縄関係だろうな…。



官僚の仕事ってそんなに恐ろしいの？



でも巻き込まれてないみたいで良かった。



業『…で、いつもみたいに離れたがらないんだ？』



「…悪い？」



業『ん？別にー。』



離れたがらないのか、そう聞かれると前の私ならすぐに離れていただろう。



けれど今は涙を見られたくないのもあって、離れなかった。



素っ気なく"悪い？"と返すも業はいつも通りで。



「……。」



ジャケットの裾を握っていた手を離し、躊躇いがちに業の背中に腕を回す。



…嫌がる、だろうか。



ぎゅっと抱き締めると少しだけ業の体が強ばったような気がした。



それに直ぐに気づいた私は回していた腕をすぐさま解く。



そして小さくごめん、と呟いた。



業『なんで？なんで謝んの？』



「え、だって嫌だったんじゃ…。」



嫌がってたはずなのに、抱き締められる力が強くなった。



え、え、なんで…？



業『びっくりしただけだけど。…好きな人に抱き着かれて平気でいれる男っていると思います？』



「……は。」



業の口から漏れた好きな人という単語。



それは私に向けられたもの。



「ええぇぇぇ！？」



暫く思考が回らなかったが、ハッとしたように驚く。



そして彼の腕から離れて5歩ほど後ろへ下がった。



「な、何言って…。」



業『やっぱ泣いてるし。』



「今はそうじゃなくて…！」



確かに泣いていることは否定したが、今は本当にそれどころではない。



この人サラッと何言ってるの…！？



バクバクとした心臓は収まらず、顔も火照っていた。

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