序章 ページ1
私が、山本さんと初めて出会ったのは、私が早稲田大学のオープンキャンパスに行った時だった。
もう、山本さんは覚えてないかもしれないけれど、私は山本さんがQuizknockで活躍する前からずっと、好きな人だ。
「うわぁ…広いな…。」
さすが私立の大学とだけあって、高校とは比べ物にならないぐらい広さが圧倒的である。
迷子になりそう、という不安は見事に的中してしまった。
「…ここ、どこ??」
というか、何で大学って、高校とかと比べてこんなに敷地が無駄にでかいの!?
オープンキャンパスに来てくれた高校生達を迷子にさせるつもりか。
諦め半分の気持ちで、とりあえず近くにあった自販機でミネラルウォーターを買った。
蓋を開けて、歩き回って乾いてしまった喉を潤そうと口を開き、飲もうとすると…あろうことか、
私にとっては死角な場所から走ってきた大学生が勢いを抑えきれずにぶつかってきた。
「…わっ、」
「す、すみません!大丈夫ですか?」
「僕は別に大丈夫です。でも、君が大丈夫じゃないですよね?」
「…で、でも、書類…。」
「あぁ、こんなん、平気ですよ。それより、制服が濡れてる方が大変じゃないですか?ちょっと待っててください。」
絶対、平気じゃない…と思いながらも、確かに制服は濡れてしまっていて。
ここは大人しく、あの人の言う通りここで待っているしかないかな、と思った。
少しすると、その人は白いタオルを持ってきた。
「…これ、よければ使ってください。」
「…良いんですか?」
「ぶつかったのは僕ですから。それに、目のやり場に困りますし…。」
最後に付け加えられた言葉は、ボソッとした感じで上手く聞き取れなかったが、視線を落としたら羞恥心で見悶えた。
微妙に透けてる。
「う、うわぁっ…す、すみません。」
「…いえ。気になさらず。」
そう言いながらも、顔が赤い。
うぅ…気を遣わせてる、私。
「…あの、もう、大丈夫です。タオル、あとで返せば良いですか?」
「…あぁ、はい。でも、あなたの高校って…。」
「あ、私がまた、こっちに来ます。えっと…名前を伺っても良いですか?」
「…山本祥彰、です。」
山本さん、か。
あまり低過ぎない声で告げられた名前を忘れないように頭に叩き込み、私は、山本さんに駅までの道を教えてもらって、家へと帰った。
そして、数日後。
タオルを返しに、ふたたび早稲田大学へと来ていた。
相変わらず、広い。
こんな中で、たった一人の男の人を見つけることが出来るのか、と不安になる。
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作者名:AIKA | 作成日時:2019年4月19日 21時