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せめて、学部とかだけでも聞いとけば良かったかもしれない。
と、今更悔やんでももう遅い。
時間はかかるかもしれないが、一人一人探していこう。
(どこから見ていこう?)
とりあえず、この前、ぶつかっちゃった所辺りにでも行ってみようか。
あそこら辺は教室も沢山あったし、もしかしたら偶然会えるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱きながら、私は足を進めた。
「あ、」
と、そんな声がしたから振り向くと、そこには目を丸くした山本さんが偶然いた。
「この前の…。」
「はい、タオルを返しに来ました!えっと…洗濯はしたので綺麗だと思います。」
「そこは気にしてないですよ、別に。…いえ、でも律儀にありがとうございます。」
柔らかく、淡く微笑んだ山本さんは、可愛い、とカッコイイ、が混ざった最高の表情になる。
その瞬間、私の胸はドキン、と高鳴った。
単純なくらい、呆気なく、私の心が奪われた瞬間。
この人が好きなんだ、一目惚れしたんだ、と思うと意識せずにはいられない。
こんなに自分は惚れっぽいのか、なんて思ってしまう。
「…じゃあ、僕はこれで。」
「あ、はい。タオル…ありがとうございました。」
そう言うと、山本さんは柔らかく笑って、そのまま背を向けた。
ーそれから、わりと短いような長いような月日が経って、私も早稲田大学へと無事に受かっていた。
ただ、山本さんとは学部が違うからか、一度も会えてない。
今日も会えなかったな、と残念に思いながら、リビングで勉強をしていると。
「あ、A。」
「何?」
私の兄…茶髪とかピアスとか、チャラそうな見た目に反して、ちゃっかりと東京大学に現役合格したエリートが、私を見下ろしていた。
実をいえば、早稲田大学に受かったのは、この兄の教えのおかげだ。
「お前、明日付き合えよ、俺に。分かったな。」
「はっ?え、何に。」
「俺のダチ、YouTuberやってんの。お前も来いよ。」
分かったな!と言い捨てると、私の返事もろくに聞かず自分の部屋へと行ってしまう。
仕方ない、兄が強引なのはいつもの事だ、と諦め、私は翌日、兄と一緒にとある場所へと行った。
「よー。」
「おっ、よく来たなぁ。あれ、妹さん?」
「おう。無理矢理連れてきた。」
…まったく知らない人たちの視線が集まってくるのは、なんか居心地が悪い。
何気なく視線を動かすと、ハッとした。
(…山本、さん?)
胸が、痛いぐらいドキドキしてる。
じっと見つめすぎてただろうか、山本さんは視線を感じたようにこちらを向いた。
「…あ。」
「お、お久しぶりです。」
「うん。」
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作者名:AIKA | 作成日時:2019年4月19日 21時