82話 オレンジのにごり湯 ページ35
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「ふう、感極まって変なこと言っちゃった……。 あんず、かわいい君にはおやつをあげよう」
……ん? 満足しなかったのか、私が差し出したお菓子をぎゅむぎゅむと押し返してくる。 気に入らなかった? どこが? 兄者を考えて買ってしまったというのがバレてしまったのだろうか。 どっちにしろ、焦る。
「え? Aさんの方がかわいいから食べられないって……? や、やだな、お世辞を求めてそう言ったわけじゃなかったんだけど」
「そういうこと言うと、私が言われたくてお菓子をあげたみたいになっちゃうでしょ」と子どもに言い聞かせるみたいに叱る。 あざとい子。 「違うのに!」なんて、そんな顔しなくても、あなたがそういう『おべっか』使えるような子じゃないって分かってる。
ただ、ちょっと恥ずかしくて、隠しようもなかったから足掻いてみただけ。
「あ、いたんだ。 あんたも座れば?気づかなかったよ、ウザすぎて」
「こぉら? また『あんた』とかって熟年夫婦みたいなこと言う……。 お兄ちゃんじゃよ」
「うるさいよ。 いちいち私の行動に文句つけないでくれる? 小姑(こじゅうと)」
「どうしてじゃ!」と喰ってかかる。 なんでそんなに威勢がいいの……? 謎なんだけど。 棺桶に収納してある電気ケトルを取って、ティーカップにお湯を注いだ。 茶葉は、アールグレイ。
「あんず? なんか、携帯が光ってるみたいだけど。 連絡じゃない……? 明星くんか氷鷹くんが探してるんじゃないの?」
「……うん、やっぱり。 でしょ? 行っておいで。 帰ってこれなかったら『これなかった』で、私が後片付けは済ませておいてあげるから」
ぶらん。 勢いよくお辞儀をして、忙しなく頭をあげては、にこりと控えめに笑った。今は大変だろうけれど、今は頑張ってほしい。 忙しいのは、それほど、周りに求められているってことだから。
(ってことは、私と兄者の二人っきりってことだよね……。 あんずは行っちゃったし、どうしよう)
「A? ちと最近、お行儀が悪くはないかえ? 服装も、スカートの丈が短くなっておるぞ」
「……」
「A?」
「きゃ……! な、何⁉ 近いんだけど!」
ティーバッグをお湯に浸からせていると、いつの間にか、兄者が背後で肩に手を置いていた。 ぼうっとしていたせいか、注意散漫に陥っていた。
「ほれ、スカートじゃよ? 膝上……10センチはあると思うんじゃけど」
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日向サク(プロフ) - さくぷらさん» わぁっ、ありがとうございます! やる気出ますね、これからも頑張れそうです! コメントありがとうございました!! (2018年4月3日 9時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
さくぷら(プロフ) - 初めまして!前作からお邪魔しております。夢主ちゃんが可愛くてついつい読んでると笑顔になるぐらいこの小説が好きです…(*´ω`*)続編おめでとうございます!これからもささやかながら応援させてくださいませ(*^^*) (2018年3月27日 20時) (レス) id: af6c7ada7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2018年3月27日 19時