暗闇,032 ページ33
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「ふぁあ…。ずっと起きてたんですね、会長さまは。」
「うん?あぁ、そうじゃよ。我輩は夜闇の住人。我輩にとっては夜の方が主な活動時間じゃからのう。くくくっ……何度も聞いたか?」
「さあ、どうでしたっけ〜。会長さま、『よふかし』なんてりっぱな悪ですよ?うふふ、わるいこです〜……」
悪い子、という批判的な物言いに零は、「おいおい、懐かしいこと言ってくれるじゃね〜か」と、これまた懐かしい口調で彼女の頭をガシガシ撫でた。もう少しいくと、頭皮がめくれそう。
「さすがはわれらの棟梁、『まおう』いまだ健在〜ってやつですね……?」
「うわぁい。どうも、わたしは月王Aっていいます〜。さっそく陛下、ごめいれいをどうぞ〜……♪」
茶目っ気たっぷりに微笑みかける。『初めて会いました』という定(てい)なのか、設定を詳細詳しく示してわりには演技が大雑把だ。
「いやいや、どうして初対面の相手に命令をせがもうとするんじゃ……。おかしいとは思わぬか、おぬしは憧れの人を前にそんな粗相を冒すのか?」
「ぬ〜ん。そそう……とはおもわないですね?少なくともわたしの『かんかく』では問題なしってはんだんを下します〜」
「それにわたしの憧れは会長さま、あなただけです。ほかに『じつれい』をたぐい見ませんから〜……少々わかりかねます。えへへ、すみません。」
何故か照れたように人差し指で目尻を掻く彼女。なんで照れているのだろうか。外面だけ見たら、彼女が『闇』を抱えているなど知れないだろう。
彼女の心の奥に潜む闇の『存在』ですら故意に忘れさせてしまうほどの優しさ。恐らく自分の真っ黒な部分で、周りの環境を汚染したくないのだろう。
「もし『そそう』だと思うのなら、斬っちゃってもらっても構いませんよ。会長さまの手でこのからだが『肉塊』と化すのであれば、それもまた『ほんもう』ですから……♪」
少しだけ、ほんの少しだけ室内の温度が低下する。いっそのことグチャグチャになりたいと思う彼女の身には、人々の希望と期待が重なっていた。重すぎる声援だ。それがしっとりと、着実に、彼女を蝕んでゆく。
「お前は『俺』をどうしたいんだよ……。今日はよく喋るなぁ、元気かよ?」
「え?…えぇと、はい。そんな感じです〜」
「オイ、うざいからって適当に返事すんな。」
「えっ。なんで分かったんですか?うふふ、すごいです」
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日向サク(プロフ) - ありがとう〜 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
しょーり - サイコー!! 大好き!! キュンキュン!! (2017年12月14日 18時) (レス) id: d8a6f4a6f4 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - とってもいいです!!最高です!!応援しています!更新頑張って下さい! (2017年10月17日 1時) (レス) id: f65f9d6e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク | 作成日時:2017年9月16日 10時