8話 焼き肉トング ページ9
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「ひとぉり、ふたぁり。ボッコボコ〜……」
「きれいな顔面がぐっちゃぐちゃ〜♪ 性悪、アイツ。ふたぁりまとめて刺し殺すぅ……☆」
「おや、」廊下の角から声が聞こえてきた。私の歌に魅了されてやってきた哀れな夏の虫。澄ましきったその顔に、強烈なニンニクをぶち込みたい。そんなことも思っちゃったり。
「おぉう、朝から物騒な『おうた』を歌うんじゃのう……。また凛月の真似をしたりして、そんなのだといつまで経ってもお友達が出来んぞい?」
「余計なお世話。あの性悪の素直さだけは称賛もの〜、あんたと違って潔(いさぎよ)い〜」
私の歌はまだまだ続く。それを察してか、呆れたような苦笑いを零して、あんたは近付いてきた。うるさい、黴臭い。 わたしに近づいて来るな。
「……ん?A、そのトングで掴んでいる黒い袋は何じゃ。というか、そのトングはどうしたんじゃ」
「あぁんもう、いっぺんに訊きすぎ……。これは庭園に落ちてた焼肉用のトング。使う前みたいで綺麗なんだけど、近くにカルビ肉のパックが落ちてた」
「ふむ。……そうか、Aも朝から行動力があるんじゃのう。して、その袋の中身は?」
「ふはは〜、さあ。なんだと思う?」
すこし茶目っ気を出して、ウインクとかしてみる。「えっ」と驚いた顔をしては、ふむふむと真面目に考えてくれる。駄目だよ、そういうことしてもアンタのことは大っ嫌いだから。私のご機嫌とりをしても無駄だね。
「当てられたら中身を見せてあげてもいいよ。当てられなかったら、庭園に置いてあったカルビ肉と一緒にこれも焼いてやる」
「なぜそこまで念押しをする……って、分かった。分かったぞい、だから返してくれんか!」
「『すかし』は良くないね?ーーー中身は?分かっても正解しないんじゃ意味がないからね。ほら、さんにいいち」
「ブレザーじゃな!!」
はぁはぁと肩をガシッと掴んでは、顔をずいっと近づける。キモっ。セクシャル・ハラスメント____セクハラだぞ。力を入れて肩をよじろうとするけど、これがなかなか上手くいかない。
同族なのにこうも違うものか。格差を見せつけられたようで、むっとしてしまう。いや、それよりもこいつを殺そう。そうすれば、全てが何事もなく終わってくれる。それだけのことだ。
「おい、ちか……い」
口を開けば、私の吐息がこの人にかかる。それくらい近い距離に、ドギマギする。なんだ。急に甘ったるい展開になっちゃったよ。
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黒羽 - はい!!応援しています!でも無理しないでくださいね!!(*´ω`*) (2017年4月26日 22時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
日向サク(プロフ) - 黒羽さん» おはよう!コメントありがとう、嬉しいです!なかなか夢主の印象を聞く機会が無いので凄く助かるよ!これからもよろしくね!頑張っていくよ〜>* ))))>< (2017年4月26日 6時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽 - 夢主ちゃんが超かわいいです!これからも楽しみにしてます! (2017年4月26日 6時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 21時