47話 人恋しい兄離れ ページ48
〈三日後〉
黒タイツは入れず、踝(くるぶし)丈の靴下を幾日分かをカバンに詰めた。もちろん他にも、衣類や食料、人恋しくなったとき用にぬいぐるみなど、多くを詰め込んだ。両親にもひと言ことわりを入れたし、あらかたの手続きは済んである。
「……いってきます、」
詰まるような「いってきます」だったけど、いつも通り。 いつもと変わらない、普遍的な朝だった。
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「Aっ、おっはよ〜☆」
「明星くん。 おは……んん、何? 用もないのに声をかけないでくれるかな。 忙しいんだ。気が散る」
叱責されて不思議に思ったのか(もっともである)「えっ、ご、ごめん……?」と広げた両手を残念そうに下げた。 いつものルーティンが成らないのだから、仕方もない。
それでも私には譲れないものがある。 馴れ合いなんか、している場合じゃないんだ。一刻も早く、レッスンをこなさなくては。たかがクラスメイトの馴れ合いだ、なくても死にはしない。 まさに、不必要。
「なんだ。どうしたんだ、明星。 抱きつかんのか? 一方的とはいえ毎朝、抱き合っているじゃないか」
「いや、でもホッケ〜、だって……」
『だって。ねえ……?』みたいな感じで、こちらを恨めしそうに見つめてくる。 少しの辛抱だよ、今は少しだけひとりにさせてほしい。 なんて、ひとりぼっちの奴が言えたものじゃないけど。
「やだな、今の言い方は『一方的』って感じじゃなかったよ? 抱き合って〜、なんて。 私が同意でもしたような言い方。 不敬だね」
「ふむ、手を添えたら『抱き合う』ことになると思うがな。 まあそれはさておき、A……なんだその大荷物は? 今日はなにか、仕事でも入っているのか?」
「あっ、たしかに。 Aも平日のお仕事とか受けるんだね〜?」
形成を立て直し、明星くんは懲りず食いついてくる。 仕事、というのに確信はないのだろう。 経験上、宿泊の仕事なら登校する意味もないだろうと分かっていたはずだ。 そこにも、私の勘違いか知らないが、二人なりの優しさを感じた。
「家出。 あんまりでかい声で言えないけどね。 しばらくは家に帰らない次第だよ。 うん、不定期だから長引く場合は『一手』も考えてるしね」
「わたしが負ける結末はあり得ない……♪」
何事かという反応で、明星くんと氷鷹くん、ふたりは顔を合わせた。 この闘い、私は最後まで気高くあることが必須だ。 私は今日をもって、独り立ちをする。
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黒羽 - はい!!応援しています!でも無理しないでくださいね!!(*´ω`*) (2017年4月26日 22時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
日向サク(プロフ) - 黒羽さん» おはよう!コメントありがとう、嬉しいです!なかなか夢主の印象を聞く機会が無いので凄く助かるよ!これからもよろしくね!頑張っていくよ〜>* ))))>< (2017年4月26日 6時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽 - 夢主ちゃんが超かわいいです!これからも楽しみにしてます! (2017年4月26日 6時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 21時