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44話 のこらない傷痕 ページ45





息苦しい。


首がギチギチと音を上げている様だ。真っ暗闇なので、何が自身の首に巻きついているのかさえ、曖昧。確かな感覚に、胸が苦しくなる。 何だかよくわからないけど、泣きたくなって、死にたくなる。



ああ、何が私の中で昂(たか)ぶっているのか。絞め上げられるほど、訳が分からなくなっていった。



「ぐう。 ひっぐ、うあぁ……」



静かに泣いた。 自分に泣く意思があったこと、それはわかっていたのだけれど、わかった上で泣いていた。 情けなく、こんな姿は誰にも見せられないと。



「……A? 大丈夫? お兄ちゃんと一緒に、病院へ行こう。」



「えっ。なんで、兄者がいるの……?」



「俺は兄者じゃないよ。 兄は兄でも『兄者』じゃない凛月だから……♪ 今は病人だから仕方ないけど、もう間違えないでね」



「ついでに兄者は仕事。泊まりだから帰ってこないよ」と額に置いてあったタオルを取って、水に浸した。 ーーー本当に。 何処からどう見ても性悪じゃないか。 髪の長さに、目つきに。面影はあれど、全くの別物だ。



「っくしゅん! ーーー凛月、ティッシュを」



「はい、どうぞ〜……。 それで、あのさあA。 辛いとこ悪いけど、今回のはお説教させてもらうよ?」



「ずびび……うん、わかってる。」



ゴミ箱に使用済みティッシュを入れて、身体を起こした。 真剣みを帯びている眸(ひとみ)だ。 私の自己管理不足のせいで、真っ昼間にこの人を叩き起こしている。いくら大嫌いな奴でも、迷惑だけはかけてはいけないと。 教わらなかったか? 自分の中でも、十分戒(いまし)めた。



「すこぉし……。 今回は間違えちゃったよね?」



「−−−どうしてセッちゃんと試合を続けたのかなぁ? 戦況は不利だったはずだよ、そこんとこの部長も止めたって言ってた。 ……『あんた』、そんな馬鹿な子だったっけ?」



「明星、とかいう『馬鹿』でもそんなことしない。 他人の忠告も聞き入れない悪い子は、俺嫌いだよ。 好意を踏みにじって、そんな子は同情すらしてもらえない」



「ただの貧血だったらここまで言わない。ことの状況を深刻に受けとめて、ーーー風邪引いてるんだよ。」



「このことは兄者にも報告させてもらうからねぇ……?」と笑いかけた。 いやだよ、何がおかしいの? 兄者と言われただけで、吃驚(びっくり)するほど冷や汗が噴き出た。

45話 同胞(はらから)の片割れ→←43話 底抜けの空



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黒羽 - はい!!応援しています!でも無理しないでくださいね!!(*´ω`*) (2017年4月26日 22時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
日向サク(プロフ) - 黒羽さん» おはよう!コメントありがとう、嬉しいです!なかなか夢主の印象を聞く機会が無いので凄く助かるよ!これからもよろしくね!頑張っていくよ〜>* ))))>< (2017年4月26日 6時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽 - 夢主ちゃんが超かわいいです!これからも楽しみにしてます! (2017年4月26日 6時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 21時

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