薄群青を飲みこんで、/kybmzw☆gyrm↑ ページ12
『あれ、香水変えました?』
「んー、そー変えた。いいっしょ」
『いいな〜。どこの?あ、あのストリップバーのやつですか?』
肌寒い風が吹く。
夏が終わった。
その話をし忘れたのがこの夏唯一の後悔。
まあ、彼女はそんな話興味も無いと思うけど。一緒に見上げたあの青天井もきっと、もう覚えてないだろうから。
十月の今日、九月某日の薄群青を思い出す。
『おそろいのにしたい。いいですか?』
「え、やだ」
好きな人とのおそろい。
恋において、恋する乙女を名乗るために、あるとちょっぴりうれしい要素。
『えー、…さげー……』
「サゲ〜」
声色ひとつ変えずにそう言う彼女。
「好きな女の匂いは自分からしない方がよくない?」
『……それってどういう?』
「いや。自分も同じ匂いだったらあーしの匂いわかんないじゃん」
『はは。たしかに』
あーあ、知ってるくせに。なんてこと言わせるんだほんとうに。
それとも隠してない私が悪い?
けどそうじゃないと困る。
欺瞞に満ちた恋なんて、私には到底耐えられない。
『ぎゃるひどーい』
涙は薄群青色。
「…あー、その話何回目?」
『まだ何も言ってないです』
「どうせ言って欲しいって話でしょ。結婚して、って」
薄群青色の涙。
あなたに薄群青を被らせるなんてこと、私はしないけど。
『だってそうじゃん。ポっと出の男には言うくせにい』
あなたにその色は似合わない。
『私がもう少し、あとちょっとはやくこの街に来てればな』
あなたには、
「……なんで?」
『ふふ、そうしたら誰より先にわたしがあなたを助けたよ』
到底似合わない。薄群青。
「…なら好きになってたかもね。Aのこと」
この痛みも、この色も、私だけでいい。
あなたの知らない夏にひとり咲いたから、
あなたの知らないところでさびしく咲くから。
『……ほんと、ひどいとおもわない?』
できることなら追い越して。
冷めた心臓であなたを語る前に。
さよならの言い方を忘れるまでに。
今からが在るように。
「でもあーしのこと好きっしょ」
『信じられくらいにね』
薄群青を飲みこんだ。
691人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな(プロフ) - 「あくる日の」のお話めちゃくちゃ好みです...!悪いれだーさんまた読みたいです (3月27日 20時) (レス) @page5 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
ちーかのすけ(プロフ) - マジで好きです!(*´ω`*)今回もめっちゃ良かったっす😇✨💕 (2月13日 8時) (レス) @page11 id: 927919367a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなり | 作成日時:2024年2月10日 19時