クル先のマブは美術教諭【twst】 (ページ8)

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寝不足ペインター！ページ8

〈美術室〉

22:00、生徒は皆、寮へ戻ったはずの校舎、
美術室に明かりがついている。

｢お前は、ホワイト家の子供部屋に飾られるそうだ。
元気で明るくて、おしゃべりなお前ならきっと上手くやれる。ホワイト家の跡継ぎ候補の子供たちと仲良くしてやれ。きっとあんな名家では友達を作るのも大変だろ。｣

美術室にいるのはNRCの美術教諭、ランドルフだ。
まるで人と喋るかのように、ほとんど描き終わっている絵にパレットナイフを滑らせながら、愛おしそうに、話しかけている。

｢……またか。｣

｢……デイヴィス。｣

今日の見回りはクルーウェルだった。

｢もう完成か。｣

｢まぁな、あとは微調整と仕上げだけ。｣

ランドルフはへらり、と笑ってみせた。
するとクルーウェルは大袈裟なほど大きな溜息をついた。

｢寝ているのか。｣

｢ちゃんと寝てる。｣

クルーウェルはもう一度溜息をついた。ついでに舌打ちまで。

｢ベッドで、だ。最近ベッドで寝たのはいつだ。｣

途端にランドルフの目が泳ぐ。
指を絡めている。彼の癖だ。

｢一昨日？｣

｢嘘をつくな。｣

｢ヒィ｣

どんな言い訳しても無駄だと分かったのかランドルフは観念したように口を開いた。

｢えっと、1週間前……です、ね。ハハ、｣

クルーウェルは頭を抱えた。呆れて言葉も出なかった。
ここ1週間、教員寮に帰っていないのを知っていた。
美術室─…もとい彼の城であるアトリエの椅子を並べて仮眠、机に突っ伏して居眠り。
果たしてそれは睡眠と言えるのか？

顔色はよく見えるが───……

｢痛ってぇ！｣

強めにチョップを見舞えば、やはり魔法を使っていた。
彼のユニーク魔法“隠れた恐怖(ハイドアンドシーク)”で悪い顔色を、酷い隈を誤魔化していた。

｢寝ろ。｣

｢いや、まだやりたいことあるし！｣

｢寝ろ。｣

｢明後日までだし、絵を届けるのは明明後日だから、それまでは大丈夫……！｣

｢寝ろ。｣

｢……っアア！分かったよ、寝るよ！｣

昔からランドルフはクルーウェルに口で勝てた試しがない。いや、殴り合いでも勝てはせんけど。クルーウェルに勝てることなんて精々古代魔法学と、魔法史と美術だけだった。

｢行くぞ。｣

｢……じゃあネ、スイートハート。｣

ランドルフは絵にヒラヒラと手を振った。

｢やめろ気色悪い。｣

｢お前だってロザリア口説いてたじゃねェかよ｣

｢……うるさい黙れ｣