【学園アリス】MEVIUS Ⅷ (ページ30)

今日:12 hit、昨日:0 hit、合計:14,531 hit

｜ページ30

窓に乗り出すようにその様子を見ている蜜柑
目には涙が浮かんでいる

ああ、あれが蜜柑を育ててくれたお爺さん…
家出同然でアリス学園に来たと聞いたし、お爺さんへの思いはより一層強いのだろう

蛍に気遣われながら蜜柑は涙を流した

暫く時が進んでおり、窓から覗く外の雪は少しばかり弱まっていた

布団から飛び起きた柚香さんはあれからどれくらい経ったのか、と焦って周りを見渡している
近くに蜜柑がいないことを悟ると、更に焦っている

爺『やあ起きたかね娘さん』

お爺さんの声に立ち上がろうと力を込めるも、それは叶わず腕に走った痛みに思わず喘いでいる

爺『ああ…急に動かしてはいかん。手の怪我は何か毒らしきものが入り込んどるみたいで暫く使えんじゃろうとお医者さんがゆうとった。足も…無理して歩けば体全体が悪化する怪我じゃて。体全体に毒が回っとる』

お爺さんの言葉に柚香さんは思わず目を瞑る
頭の中ではぐるぐると考えが巡っている

…体の中に入り込んだ毒は追手から逃げている途中に打ち込まれたのだろう
その状態で蜜柑の状態も良くなく、1人吹雪の中あてもなく彷徨っていた

柚香『あ、あの子は…』

震える声を必死に振り絞る

爺『ああ…蜜柑ちゃんなら可哀想に随分衰弱しきっておっての。今はお医者さんのもとで手厚く看病してもろうとる。大丈夫じゃよ、周りに不審がられんようにワシの孫とゆうてある。何か…人に見つかりたくない事情があるんじゃろ?』

柚香さんの心配に既に色々策は打っていたようだった
これはもうお爺さんの先読みがすごいとしか言いようがない

お爺さんの問いに柚香さんは押し黙ったまま

爺『今はとにかくここで養生して…』

しかしそれすら気にも留めずお爺さんが柚香さんの体を心配していると急に玄関の扉が叩かれた

『すみません家主さんいますか?国家機関のものです。今すぐここを開けてください』

外から大きな声で家中に響き渡る
それは初校長の追手の声

急な来客に何事かと腰を上げて来客に対応しようと玄関に近づいていくお爺さん

爺『こ…国家機関とな…。何じゃそりゃ…』

遂に来てしまった追手に柚香さんは体を硬らせる
今捕まれば蜜柑ですら守れない
…それに助けてくれたお爺さんにまで迷惑をかけてしまう

『ここにあの女がいると既にわかっています。開けなさい』

一向に開かない玄関の扉に追い打ちをかけるように叫んでいる
「あの女」という単語にお爺さんは反応して、振り返って柚香さんに問いかける