月下美人の君【蒙恬ルート.2】 (ページ6)

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誤解.4 ページ6

そんな戦場でのやり取りを知るはずがなく、咸陽では倒れたAが、数日ぶりに戻ってきた医者に体を見てもらっていた。

向「…先生、Aさんの
具合はいかがでしょうか？」

医者「疲労が重なっておられたみたいですね。
特に問題にするべき
大きな病気も見つかりませんでした」

陽「お腹の中のお子は？元気ですか？」

医者「……お子？？」

陽「つわりが！
…身籠っていらっしゃる症状が
出ておりましたので」

医者「ああ…。
それは、きっと想像妊娠でしょう。
子どもがいない女性に、身籠った時と同じ症状が出ることが稀にあります」

向・陽「「…ッ！なんてこと！！」」

A「…それは本当ですか？」

向・陽「「…Aさん！！」」

自分達はとんでも無いことをしてしまったかもしれない…と震える二人。後宮に住み込みで護衛してくれる彼女を助けたい一心だった。

医者「ええ…。A様、

そちらに加えて
誠に申し上げ辛いのですが…」

A「…………」

医者から聞かされる言葉たちに、頭が回らない。
向と陽に「絶対妊娠ですよ」と言われて、
自分でも嬉しくなって…恬に早く知らせてあげたいと思ったのが裏目に出てしまった。

自分の愚かな行為に絶望しながら、
医師からもまた、絶望的な事実を告げられた。

⭐⭐

パタン…と扉が閉まり、医師が去った部屋は、宮女二人のすすり泣く声と重々しい雰囲気に包まれていた。

向「Aさん…私ッ！
大変申し訳ないことを…」

震える彼女達に、弱々しく…それでも微笑む。

A「私が悪いんです。

子どもがほしいと思ったばっかりに…、
早とちりしてしまって…。

護衛官としての立場なのに、
お二人にご迷惑をお掛けして
大変申し訳ございません」

陽「そんなッ！…好きな人との
子どもを望まない女などいません！

A様は何も、何も悪くありません！」

そう言って泣いてくれる優しい二人に
少し心が楽になった。

…それでも、きっと喜んでくれるであろう蒙恬に、
絶望的なこと告げなくてはならない哀しみと
恐ろしさは消えなかった。

A「…面目ないですが、
しばらくお休みを貰ってもよろしいでしょうか？

…体を休めて参ります」

向「もちろんです！
…ゆっくりお休みになってください」

そう言って席を外してくれた二人。

Aは、窓の外を眺めて
風が頬を包み込むように撫でてくれる中

シーツを握りしめて、泣いていた。