月下美人の君〜外伝〜

【王賁】氷姫との恋.20 ページ42

A「やっぱりここにきちゃう…」

そこは王賁と出会った場所。
自然が多く、城の外は戦で攻めにくい地形なのか絶壁の崖がある。一度落ちれば、命はないだろう…。


Aは足元を覗き込むと、そこには暗闇の中で自分が葬ってきた人間たちが手招きしているように感じた。


A「一度目は姉様。…二度目は王賁に救われた命。…あの人の元気な姿をみただけで、もう心残りはない」

そう言って崖に足を進める。
瞼を閉じると、やっぱり浮かぶのは愛しい人だった。



王賁 「Aッッッー！！！！」



重力に身を任せ下に落ちる瞬間、幻聴が聞こえたかと思った。


だが、思いっきり体を抱きしめられた感覚は、
Aを現実に引き戻した。


王賁 「…ぐっ、…お前には何度バカって言えば分かるんだ、バカ」


A「………王賁っ？！」


そこには落ちる瞬間に槍を突き刺し、もう片手でAを抱きかかえている王賁がいた。


ギギギィィ…槍が不吉な音を立てて今にも落ちそうだ。二人分の体重がかかっている王賁の腕も血管が浮き出てはちきれそうだった。


A「…な、なんでここにっ？！…もう私はいいの！…離して…！」




王賁 「ふざけるなッ！…俺を置いて先に死ぬだと…。そんなこと、この王賁が絶対に許さんッ！」



思えば彼が怒鳴ったり、感情を表に出すのを見るのはいつぶりだろうか…。夢にまで見た愛しい人。
…でもこんな所で彼を死なせるわけにはいかない。



A「王賁……いつまでも過去に囚われる私を許して…。あなたを好きになってから、あなたなしじゃ生きられなくなったなんて…」


そう言って支えてくれる王賁の腕を、外そうとする。


A「…愛してる。王賁 」

……最後には笑えたかな。




王賁 「やめろッ！Aッ！！」

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