裏マネの業務。2 **

51.不審者マネの本性 ページ1

、










痛快だった。





私を憐れむ視線、恐れる視線、好奇の目。


それらが初めて全部、無くなった。













「…………え、今のA？」









その誰かの呟きにすらスッキリした気分だけど、後々面倒になると思うと微妙だ




振り向けばさっきまで「不審者マネ居なくなった！」と騒いでたバレー部全員が言葉を失ってる




…そうやっていつも黙っててくんないかな












「……バスジャック犯が、女子になった、」


「虎。A、元々女子だから…」













言葉を失ってるのはウチのバレー部員だけでなかった




私は梟谷バレー部員に、とびっきりの笑顔で、音もなく唇を動かした














「(…ざ、ま、あ、み、ろ)」



「…………。」



「えっ何？何て言った？」












ふっと鼻で笑う私をげんなりした目つきで見てる赤葦だけが、意味を汲み取ったらしい。




今くらいは毒吐いたっていいでしょ。




いっつも人を不審者扱いしてるから、その人ら。














「待て、あれ本当にAかよ！！？」


「逆ルックス詐欺師かあいつ！！！」













だからって詐欺師扱いするな。




…………ダメだこの人ら、黙らせられないし、黙る気もないのか。もういいや、挨拶とっととしよ。
















「今回限り、音駒のマネをやらせて頂きます。逸見Aです。よろしくお願いします」




「わ、Aさん、凄い印象変わりますねー！俺覚えてますかっ？」




「リエーフでしょ？覚えてるよ、久しぶり」




「お、話したらこの前のAだな。よろしく」















暗闇で見た時より、鮮やかなシルバーの髪を撫でてあげながら夜久さんにも頭を下げる




今こうして見るとリエーフの髪色は思った以上に綺麗な銀で、



見事なエメラルドグリーンの色をした瞳をキラキラ輝かせて私を見ている













「まさかAさんがバレー部とは思いませんでした、マネージャーAさんで嬉しいです！」



「少しでも知ってる子で助かったよ」













……音駒バレー部の懐の深さって何なんだ




見た目が不審者な時と今でも大して変わらない態度に、うちのバレー部が特殊なのか



このバレー部が特別なのか分からないんだけど。

52.どいつもコイツも喧しい→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す