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○双つの黒から一つの黒へ〜Ver.1其の弍〜 ページ50

「ははっ……完敗だよ」



中也からそっと離れると、向かい側で太宰さんが笑った



涙を拭って無理に笑う太宰さんの姿は、見ていて辛いものがあった



私が申し訳なくなって目をそらすと、隣の中也がツカツカと歩き出し



なんと太宰さんの鳩尾に膝を入れた



太宰さんが体をくの字に曲げて呻く



「Aに選ばれなかったからってクヨクヨすんじゃねぇよ」



中也はそう言って太宰さんの襟首を掴み上げた



「本当にAが好きだったんならAにあんな面させんな。巫山戯てんのか手前。お得意の道化はどうした?」



太宰さんは中也を見下ろす



「……ふふ、そうだね。私らしくもない」



一瞬の静寂の後、太宰さんがそう言って中也の手を振り払い私の方を向いた



「ごめんね、もう泣かないよ。その代わりお願いしたい事がある」



そして私の頭にポンと手を乗せた



「絶対に、幸せになってね。中也の側で幸せになれなかったり、悲しい気持ちになったりした時はいつでも私の元に来ると良い。いつでも歓迎するよ」



その目からはもう涙は消えている



「じゃ、癪だけど私は潔く負けを認めて川でも流れて来るよ」



私はそう言って歩き出した太宰さんの袖を掴んだ



驚いたような顔で太宰さんが振り向く



「くれぐれも死なないでくださいよ。もし相談したい事があった時に誰も頼れなくなるでしょう。私友達少ないんですから」



私は戯けたようにそう言って、笑った



すると太宰さんも笑い返してくれた



「中也の代わりとは言わないんだね。まぁ君の恋人になれなくても友達にはなってあげられるから、これからは友達、いや、親友として宜しくお願いしようかな?」



「えぇ、お願いしますね太宰さん」



私はニコニコと手を振った太宰さんに手を振り返した



公園から太宰さんが見えなくなった途端、背後から抱きしめられる



「話長えよ馬鹿」



耳元で不機嫌そうな中也の声がした



「ごめんごめん。この後いっぱい構ってあげるから」



私が悪戯っぽい口調でそう言うと突如体が回転し、目の前に中也の顔が現れた



「それは夜のお誘いと受け取って良いのか?」



「なっ……でもまだキスも」



反論しようとした瞬間口が塞がれる



中也は口を離してニヤリと笑った



「ほらキスした。これで良いだろ?」



顔が真っ赤に染まる



「……あんたは馬鹿ですか」



そう言いつつも、不思議と嫌ではなかった

この小説の続きへ→←○双つの黒から一つの黒へ〜Ver.1其の壱〜


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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年12月9日 23時

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