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◎第卅話 ページ31

私は隣で私に向かって不敵に笑う中也を見下ろした



昔から私たちはこうだった



私たちは何処までも正反対だったのに、何故か同じ時はとことん同じだった



相棒として活躍できたのもその可笑しな関係だったからだろう



だが、女性の好みも反対だったはずだ



中也はどちらかというと気の強い方が好みで、私は可憐な清楚系の女性が好きだった



私は少し考えてその答えに突き当たった



Aは、その両方の面を合わせ持っているのだ



そして何故か、私はその気の強い方の面に惚れた



中也は如何なのだろうか



「ねぇ中也、君はAの何処が好きなんだい?」



私が聞くと中也は



「何で手前なんざに教えてやらねぇといけないんだよ」



と舌打ちをしたが私が



「おや、言えないのかい?」



と挑発すると易々と乗ってくる



「言えないわけねぇだろ。俺が惚れたのはな…あいつの、冷たい様で優しいところだよ。手前の方は如何なんだ」



やっぱり、そうだった



あの子は実に不思議だ



まぁ聞いたからには答えてあげようか



「私が彼女に惚れたのはね…あの、まっすぐな、気の強そうな瞳さ。ま、彼女の全てが好きだけどね」



そう答えると中也が片眉を上げた



「手前お淑やかで大人しい奴が好みなんじゃなかったのかよ」



「気の強い子も、Aなら悪くないと思ってね」



「あっそ、奇遇だな。俺もちょっとぐらい静かな奴でもAなら構わねぇと思ってたとこだ」



私たちの間に火花が散った



頭は回らないけれど、恋愛面で中也は相手にとって不足なしだ



認めるのも癪だが、顔も中々に整っているし女性の中でも人気があった



実際、少しだけだが遅れをとってしまった



けれど先にAの心を奪うのは私だ



「Aは私が頂くよ」



「ほざけ、彼奴は俺のもんだ」



カンカンカン…と踏切の閉まる音がし、車窓から街の景色が見えた



私は外に目を向ける



私の視線を追いかけて中也もその方向を向く



そして私たちは同時に目を見開いた



Aの特徴のあるあの綺麗な髪が見えたからだ



彼女はスーツ姿の男に引っ張られ、何処かへと連れていかれていた



私たちは目の色を変えた



何故なら彼女の瞳からは



___________透明な涙が伝っていたからだ

○第卅壱話→←●第廿玖話


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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年12月9日 23時

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