霊感系女子と双つの黒【双黒】 (ページ25)

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●第廿詩話ページ25

「申し訳ありませんが、中原幹部の感情はよくわかりませんので自分で考えてみてください」

樋口は20分ほど話した後お手上げと、両手を挙げた

「…ま、ありがとな。仕事頑張れよ」

樋口ははい、と頷いて出ていきかけたがふと振り返る

「中原幹部優しいんですから、今みたいに素直に物を言えば良いのではないでしょうか」

俺はうっと詰まった

それは俺が最も苦手としているものの一つなのだ

太宰並みに苦手だ

「できるならやってる…」

俺は机に突っ伏した

どうも昔から素直になれないのだ

いつも本当の気持ちと違う事を言ってしまう

「…まあ、自分が何で惚れたかぐらい特定しとかねぇと不便だよな」

俺は素直じゃない言い訳めいた言葉を吐き、名刺に書かれた番号を押す

((中原だ。傷の様子はどうだ？少し話したいことがあるから空いている時間を教えてくれ。…よし、これでいこう))

心の中でリハーサルをして俺は通話ボタンを押した

数秒後、電話が繋がり向こう側から声が聞こえた

「はい、神城です」

その声にドキッと胸が跳ねる

心拍がみるみる上がり、顔が赤くなる

口について出た言葉はリハーサルとは全く違う、捻くれた言葉だった

「中原だ。てめぇの事について話がある。明日の夕方六時から三十分空けとけ」

……リハーサルした意味ねぇ

「いや、その時間予約入ってるんですが…」

向こうで神城が戸惑ったような声を上げた

悪い、と謝る言葉は口から出て来ず代わりに舌打ちが出た

「じゃあ何時なら空いてんだ」

キツい言葉でしか話せない自分の性分に嫌気がさした

これは断られるだろうな…

俺が心の中で春に別れを告げていると電話の向こうでため息が聞こえ

「今学校休んでるので空いてますが」

という声が聞こえた

春、やっぱまだ行くな

俺は口角が上がるのを感じた

「じゃあ今行く。住所は」

「名刺に書いてます」

割とここの近くだった

車で行けば十五分ほどで着くだろう

「じゃああと十五分ぐらいしたら着く」

俺はそう言って電話を切り、外套を引っ掴んで車に乗り込んだ