◎第廿壱話 ページ22
私は腕の中で静かに寝息を立てるAを見つめた
胸がキリキリと痛む気がした
私がもっと早くに駆けつけていれば、こんな怖い思いをしないで済んだのに
ちゃんと食べているのかと思うほど軽いその体には幾十本もの火傷の跡が走っている
きっと、凄く痛かっただろう
「…ごめんね」
私がそう呟くとAが薄っすらと目を開けた
「…謝らないでください…。助けに来てくださった太宰さん、とても格好良かったですよ」
Aはそう呟いて顔を背けた
心なしかその顔は微かに赤かった
私はゆっくりと微笑んだ
「君の、王子様になれたかな?」
「…私は、お姫様みたいな柄じゃないですよ。けど、童話の王子様がいたら、こんな感じなんでしょうね」
Aのその言葉に胸が高鳴る
この胸の思いを吐露してしまおうかと思った
けれど、Aはすでに腕の中で再び眠りに落ちていた
「遅い!!」
車に戻ると国木田くんが泣きそうな顔で言って来た
どうしてだろう
Aの泣き顔にはあんなにもドキドキしたのに国木田くんの泣きかけている顔は恐ろしいほど何も感じない
否、笑いしか感じない
「ごめんねぇ〜?国木田くん超がつくほどの怖がりだものねぇ〜?よしよし怖かったでちゅね〜」
私がそうからかうと国木田くんは私を思い切りしばいた
「…先生は、どうした」
「疲れ切ってしまったようでね。眠ってしまわれたよ」
私は後部座席にそっとAを寝かせ、その頭を膝の上に乗せた
そして何か言いたげな国木田くんに
「羨ましい?」
とニタリと笑った
「羨ましいわけあるか!!は、破廉恥だぞ!!」
国木田くんはそう言って顔を真っ赤にさせ、車を発進させる
「国木田くんは初心だな〜」
私がそうからかうと国木田くんがサイドミラー越しに私を見た
「…お前とて、恋なんてするのは初めてだろう」
その言葉にどきりとする
「ははっ…さぁね」
私はそう言葉を濁し、Aの髪を撫でた
「でも、少なくともこんなに愛おしいと思ったのは初めてだよ」
その呟きはAには届かなかった
けれど、いつか伝えるから
待っててくれ
私はAの寝顔を見つめ、そう誓った
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年12月9日 23時