霊感系女子と双つの黒【双黒】 (ページ20)

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○第拾玖話ページ20

「お前はなんだ…！」

私は目の前の人物に叫んだ

「俺？俺ハナ…？此処ノ看護師ニ焼キ殺サレタ女ノ子ノ兄サ…」

目の前の男はそう言ってけたたましく笑った

「妹ハナ…金縛リニアウ事デズット悩ンデタ…デモドノ除霊師モソレヲ解決デキズニ遂ニ妹ハコノ病院ニ入レラレタ…。アノ火事ガアッタ時、妹ハ逃ゲラレナカッタ。苦シカッタダロウナ…」

ゆらりとその体が揺れ、また後ろに銀色の光が現れた

私は理解した

此奴は霊でも妖でもなく、人間の異能力者

そしてあれはメスなどの実態を持ったものでもなく、呪いなどでもなく、光なのだ

私の結界でも光は弾き返せない

対策を考えるが、自分の前における程のサイズの鏡や金属板など見当たらない

「チッ…除霊師になんの恨みがある。妹の金縛りを治せなかったからか？恨むならこの病院に火を放った奴を恨む事をお勧めする」

私はそう言ってじりじりと後ずさった

いくら霊に強くても人相手に強いわけではない

取り柄といえば足の速さくらいだ

私は扉の前にたどり着こうと後ずさりながらそれを悟らせないように喋り続けた

「知ってるか？金縛りってのはな、霊関係だけじゃなくストレスとかでなったりするんだ。悪いが除霊師は精神カウンセラーじゃあない」

あと数歩…

手に金属の感触がした

私がそれを握ろうとしたその瞬間

「逃ガサナイヨ？」

バチっと火花が散り、手に激痛が走る

「～～～～～っ！！」

あまりの痛みに声にならぬ絶叫をあげる

その後も連続して光が襲いかかってきて足や脇腹を焼く

「許サナイ…全員…殺シテヤル…」

目の前で巨大な光が形成される

見ているだけで目が潰れそうだ

私は目を閉じた

こんな人生の終わり方は嫌だな

除霊師が廃病院で死ぬなんて笑える話だ

頭の中に下に残してきた太宰さん達の顔が浮かんだ

お力になれず申し訳ないはこっちのセリフだ

こんな事になるなら空手でも習っておけばよかったな

皮肉が次々と頭の中に浮かんでは消える

人間、恐怖にかられると現実逃避に走る物なのだろう

「死ネ…！」

そう声が聞こえた

私は来るであろう痛みに身構えた

だが、来たのは痛みではなく暖かい感触

開いた目に映ったのは眩しい光ではなく、特徴的な青のアクセサリー

…これも、現実逃避するために作り出した幻想だろうか