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○第拾詩話 ページ15

私が目を覚ますと時刻は5:25



危ない危ない



寝坊するところだった



我ながら驚くべき睡眠能力だ



私は枕をしまって席を立った



鞄の中で薬と包帯、そしてハンカチがぶつかった



そう言えば太宰さん学校来なかったな



私はふと屋上を見た



誰もいなかった



何となく、いるのではないかと期待してしまっていた自分がいた



別に来なくていい



来ても面倒なだけなのに何故かいない事に軽い失望感を覚えた



…せっかく持ってきた包帯とハンカチを返せなかったからだろう



私は自分にそう言い聞かせて校門をくぐった



そして家のドアを開ける



「…やぁ、Aちゃん。待ってたよ」



玄関に立っていたのは太宰さんだった



「太宰さん?予約しておいて下さいと言ったと思うのですが」



私がそう言うと太宰さんは父の方を指した



「彼に君に用があると言ったら6時までなら話して良いと言われたのでね」



父さんか…



なんか絶対変な勘違いしてそうだな



私はそうですか。とため息を吐いて太宰さんを連れて家に上がった



そして自分の部屋に案内する



「ここがAちゃんの部屋かい?」



太宰さんが特に何もない私の部屋を見渡す



「殺風景な部屋ですいませんね。今お茶を持ってきますので好きなところにおかけになっていて下さい」



私はそう言って居間に茶を取りに行った



私が部屋に帰ると太宰さんは箪笥の中の制作途中の札を興味深げに覗いていた



「勝手に開けないで下さい」



私はそう言いながら太宰さんにお茶を差し出す



そして学校鞄の中から包帯とハンカチを取り出した



「ありがとうございました。一応洗濯したのですがまだ綺麗になっていなければ新しい物をご用意します」



太宰さんはニコリと笑って包帯とハンカチを受け取った



「十分綺麗になってるよ。元より綺麗なぐらいだ」



そして私の方を見て



「学校鞄から取り出したと言うことは…私が来ることを期待してくれていたのかな?」



と悪戯っぽく笑った



少し顔に熱が集まるのを感じた



「そ、そんなわけないでしょう。ただ会った時に持っていなければ申し訳ないと思っただけです」



私が言うと太宰さんはそうかい、と笑った



気のせいだろうか



何となくその笑顔が寂しげだった気がした

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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年12月9日 23時

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