Tomorrow's Moon will be Beautiful 【中原中也】

◆ The Beautiful Sea 〜２〜 ページ42

正面の赤い道の上を歩いてきたAは、本当に同じ人間なのかと思うほど美しかった



Aは俺の手を取り、祭壇に上がった



俺は微笑んできたAに微笑み返す



本当にこいつと結婚できるなんて夢のようだ









正直、プロポーズした時は不安でいっぱいだった



付き合い始めて何年も経つのに、結婚と言った単語を全くAから聞かなかったからだ



もしかして結婚なんてしたくないのだろうかと思い、ずっと我慢していた



結婚願望はあったが、Aに離れられたくなかった



だが、三ヶ月ほど前のAの誕生日



遂に俺は決心した



もう、この関係を終わらせたかったのだ



恋人以上、夫婦未満のこの関係を



Aの名字を、俺のものに変えたかった



何処にも行かないように、側に繋ぎ止めて居たかった



その薬指に、俺のものであるという証拠の指輪を付けたかった



もっと、もっとAを幸せにしてやりたかった



俺はそんな気持ちを込め、Aにカクテルを贈った



ウエディング・ベル・ドライ



Aならきっと判るはずだ



俺は固唾をのんで、マスターからカクテルを受け取るAを見た



Aはそれを見て暫し固まり、口元を手で覆った



そしてマスターに何かを囁いた



『あちらのお客様からです』



マスターが俺に差し出したのは『XYZ』



__________カクテル言葉、『永遠に貴方のもの』



俺はその瞬間涙をこぼした事を覚えている



Aが受けてくれたという事実に、嬉し泣きした



Aはそんな俺を満面の笑みで見つめて居た









俺がそれを思い出していると隣でクスリとAが笑った



「何笑ってんだよ」



俺がAの顔を覗き込むと



「いや、何でも」



とAは澄まし顔になって神父の方を見た



神父さんは聖書の一節を読み終えるところだった



次は、誓いの言葉だ



「中原中也さん、あなたはこの女性を健康な時も病の時も、富める時も貧しい時も、良い時も悪い時も、愛し合い、敬い、慰め、助けて、変わることなく愛することを誓いますか？」



俺は頷く



「はい、誓います」



神父はAの方を見た



「冴月Aさん、あなたはこの男性を健康な時も病の時も、富める時も貧しい時も、良い時も悪い時も、愛し合い、敬い、慰め、助けて、変わることなく愛することを誓いますか？」



俺は少し心配しながらAを見たが、Aは微笑んで言ってくれた



「はい、誓います」

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