Tomorrow's Moon will be Beautiful 【中原中也】

◆１９ｂｉｔ ページ21

Aと酒を飲みながら話をする



ここ最近忙しくてあまり話す機会がなかった為俺は幸せだった



酒が入るとAは表情豊かになり、口数が増える



素面の時のAも好きだが、こんな風によく笑うAも好きだ



取り留めのない下らない話をして居るなか、ふとAが言った



「前々から思っていたのですが中也さん美形ですし性格も良いのに何故彼女さんや奥さんが居ないのですか？」



俺はその問いにドキッとした



実際に何回かそう言う話を持ちかけられたことがある



だが、いずれもしっくり来ず一ヶ月ほどで自然消滅するのが現状だった



「なんと言うか…俺の理想が高すぎるのが悪いんだと思う…」



俺はそう苦笑した



そしてそこで言葉を切ろうとした



が、少し酒が入っていた所為か言おうと思って居なかった事まで口走ってしまった



「お前なんか良いなと思うんだが…」



その言葉にAはポカンとしたが、冗談と捉えたのかクスリと笑い



「私なんか中也さんに似合いませんよ。中也さんはもっと良い人と付き合うべきです。私みたいな不器用な奴より」



と言った



「…そっか」



やはり、俺はこいつに恋愛対象として見られて居ないのか



どうにかして、振り向かせられないのだろうか



こいつの目を、憧れの俺から男としての俺に向けられないのだろうか



「…Aはどうなんだ？美形なんだし今まで彼氏の一人や二人居ただろう？」



俺が己の傷心を隠すようにそう笑って尋ねるとAは苦笑いし



「居ませんよ。そういう人は孰れもよく笑う人で…憧れとしては映るんですけどどうしても恋愛対象に切り替えることができなくて…」



と答えた



…俺も、きっとそんな感じなんだろうな



強引にいけば、振り向いて貰えるのだろうか



その、青い瞳に俺への愛が宿されることがあるのだろうか



「…じゃあ俺が今お前に好きっつったらどうする？」



だが、不甲斐ない俺は冗談めかしてこう言う事しか出来なかった



案の定Aは笑った



「やっぱり中也さんは憧れの上司ですよ。なんか、そんな感じじゃないんですよね」



俺も笑った



「…だよな」



冗談だから気にすんな



そんな笑みを作った



泣き出したくなる心を伏せて、ただ笑った

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