１０６話 ページ9
フユ視点
「ねぇねぇ、フユくんって呼んでいい？」
「誕生日いつー？」
「彼女っているの？」
チャイムが鳴って10秒後、俺は女子たちに囲まれた。
へ、へぇ、学校ってこういう…。
「…え、っと…」
ちら、とナツの方を見ると、同じくらいの男子たちに囲まれていた。
少しだけ、もやもやした。
「こらっ！桜凛くんが困ってるでしょ！質問は順番！」
しっかりしてそうな女子の一言で、少しだけ静かになった。
「はーいお母さん！」
「お母さん言わない！」
お、お母さん…？
「私は
「…あ、うん。よろしく。…桜凛は二人いるし、フユでいいよ。」
…まだ高1なのに生徒会長…？すごいな…。
「私も！フユくんって呼んでいいー？！」
「私もー！」
すごい皆フレンドリーだな。…こういうもの？
「いいよ。」
それから、俺はたくさんの質問に答えていった。
「フユくん！昼ごはん一緒に食べよう！」
女子の一人(もう名前は覚えれていない)が話しかけてきた。
残念だけど…。
「ごめん。先約があるから。」
一応、申し訳無さそうな顔をしといて、先約の相手に呼びかける。
「ナツ！ご飯食べよ。」
「はーい！」
「ほわぁー！！風が気持ちいいー！！」
言葉では平気なフリをしているものの、ナツは微かに震えていた。
俺は上着を脱ぐと、ナツに投げた。
「寒いんでしょ、あげるよ。」
俺は寒いのは得意だし。
「ありがと！」
「いや〜、お互いすぐ人気者になっちゃったねぇ。」
卵焼きを頬張りながらナツが満足げに呟く。
「まぁ、この時期に…それも名門高校に転入って珍しいからな。」
「そうなんだ！」
ボディーガード専門学校(仮)では、大学レベルまでの学力は強制的につけさせられる。
だからまぁ…余裕っちゃ余裕だよね。
「それで…さ。」
ナツが気まずげに口を開いた。
「あたし達、名字一緒だからさ。…その、恋人同士とは思われてないみたいなの。よく考えてなかったんだけど、どうしようかなぁって、」
なるほど。
下手に俺等が恋人同士だとカミングアウトしたら混乱を招いてしまうし、いじめの対象にもなるかもしれない。
…俺的には、別にカミングアウトしてもいいと思うけど…。
「皆には黙っとこうか。」
「うん、そうだね！」
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作者名：まき | 作成日時：2022年9月22日 22時
