１３７話 ページ41
フユ視点
「はぁ、っ…はぁ…！」
疲労ばかりが溜まっていく。
息切れをする俺たちとは対象的に、
「良い連携だね？あの頃とは大違いだ。」
それでも余裕そうな彼に、俺は歯を噛み締めた。
確かに、俺たちは前世より強くなった。
…でも、敵わない？
「っ、フユ！」
アキ姉さんの焦ったような声が聞こえて、反射的に飛び退いた。
俺の居たところには、漆黒の短刀が突き刺さっていた。
「は、っ、ありがとう、アキ姉さん！」
そうだ、諦めてる場合じゃない。
先程まで死季と近接戦をしていたハル兄さんとナツ下がった。
それを合図に、俺とアキ姉さんが死季と距離を詰める。
ハル兄さんは、バランス型。日本刀のようなものをよく使う。手先が器用なため、いろいろと応用が利く。
ナツは、スピード型。短刀のようなものをよく使う。動きが速いため、小回りが利く。
アキ姉さんは、パワー型。金属バットのようなものをよく使う。常人離れした怪力をもつため、一撃が重い。
そして、俺は。
「…っ、なるほど。先程から動き回っていたのはこのためか。」
頭脳型。
糸をよく使う。
肉眼で見えないほど細く、金属糸より硬い。
自分で言うのもあれだけど。戦略において右に出る者はいない。
奴の四肢の自由を奪い、アキ姉さんに目配せをする。
アキ姉さんは頷き、金属バットを振りかぶった。
…が、死季に当たることはなかった。
「…え、」
ゴトリ、と何かが落ちた音がした。
「…もう。痛いなぁ？君のせいで両腕と左脚取れちゃったじゃん。」
すぐ後ろで、不気味な声が聞こえた。
「＿＿＿＿＿っ！！！？」
脇腹に、鈍い痛みが走る。
体当たりをされたと自覚したのは、それから何秒後だっただろうか。
吹き飛ばされた俺を背に、ハル兄さんが刀を構えた。
アキ姉さんとナツは、少しずつ、死季から距離をとった。
人間であれば、今すぐにでも死に至ってもおかしくない出血量。
…そう。”人間であれば“。
闇が死季の身体を包み、地面に落とされた四肢がその闇に繋がれる。
そして、四肢がひとりでに死季の身体へ導かれて行った。
その異様な光景に、俺たちは目を見開くことしか出来なかった。
「人間じゃ、ない…？」
ハル兄さんの、乾いた声が響く。
「あれ？知らなかったの？俺はね＿＿＿＿＿っ！？」
まだ言い切れていないのに、男は膝をついた。
「か…っは…！」
男の胸は、深々とナイフが突き刺されていた。
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作者名：まき | 作成日時：2022年9月22日 22時
