【本編】レイスの使者 (ページ21)

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20話【アーサー】ページ21

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　面白い提案をする子だな。

　馬鹿にしたわけではなく、素直にそう思ってしまった。

　出逢って数時間しか経っていない俺達を旅に誘うなんて、どうやら俺とジョセフくんはとても気が合うらしい。

「俺も賛成だよ。皆さえ良ければ、だけど」

　ぐるりと見渡す。歳も性別も、さっき使っていた武器もバラバラな皆が俺を見ている。

　一人だけ、大きな傷痕のある青年が、俺と目が合うと舌打ちをして視線をそらした。
　……まぁ、何も言って来ないという事は、俺が参加しても異論は無いわけだ。

　一人、また一人と賛成の手が上がっていく中、俺はふと窓辺に近づいた。

「……雨、止んじゃったな」

　ちょっと残念だった。

　先程、割られた窓の近くにしゃがみ込む。
　そこには、たくさんの窓の破片が散らばっていた。

　ここには小さい子もいるのだし、迂闊に触ると危ないな――そう思って律儀に拾い集めてしまうのだから、俺も随分と人が好いらしい。

　旅に出るとしたら、多くのゾンビを倒す事になるだろうな。
　もちろん強くなる為の試練だからウェルカムなんだけど、こういう時に特定の武器を持っていないと困るのだ。

　今までは一人旅だからナイフでいいやと思っていたけれど、自分に合う武器を探してみるのも良いかもしれない。
　皆なかなかの手練れのようだし、自分専用の武器を持っていたのが、ちょっと羨ましい。

　何だかワクワクするなぁなんて、柄にもなく思う。
　硝子の破片が手のひらの上で、朝日を浴びてキラキラ輝くのを眺めながら。