第一話 鉱物の意味 ページ48
綾辻先生と出会って一年後のお話
「A君。」
或る依頼の調査から帰ってきた綾辻行人に呼ばれる。
事務所のソファーに寝っ転がりスマホを見ていたAは、視線だけを此方にやり、言葉を綴った。
『何だ?珍しく未来予知の出番でも来……』
彼女の言葉は止まった。
彼は手に物を持っていて、中に花と鉱物のアクセサリーが入っているのが判る。
彼女の顔は曇った。
『────随分と趣味の悪い貰い物だな。』
彼女は其れを見て、プレゼントされたものだということに気付く。
「……よく判ったな。」
そういう綾辻の顔は何処か疲れたような表情だ。
何時もの様な冷淡な表情は崩れている。
『判るさ。石がそう云っている。』
彼女は宝石を見ると、
『……もしかしてプレゼントは其れ以外にもあるのか?』
「正解だ。俺は鉱物には詳しくない。どれが何の石だか調べようも無くてな。」
そう云いながら椅子に座って、引き出しの中から更に2個の箱を出す。
「依頼者から貰ったんだが、要らないと云っても無理に押し付けられたんだ。宝石に罪は無いが気味が悪い。」
『気味が悪い?当たり前だろうな。』
やれやれと溜息を吐く綾辻を見て、クスクスと笑うとその宝石を手に取る。
彼女は月明かりに其れを照らす、大切なものを眺めている様にじっくりと観察しながら。
『このプレゼント、貰った順番は?』
そう訊ねると右から順にだ。と答えが返ってきた。
『へぇ。よくこんなに石を集めたものだよね。』
「依頼者の実家が宝石店だった。其れの影響だろう。」
ふーん、と何とも興味なさげな返事を返した後、ちょっと待っててくれ。彼女はそう云い、上の階に行き、戻ってくるととある一つの箱を出してきた。
『貰ってばかりではアレだろう?君からプレゼントしてやってくれ。』
「中身は?」
不思議に思って綾辻は訊ねる。
『宝石だよ。コレクションの一つだがな、君がこれを渡したら贈り物は止まるだろう。』
その代わり、と言葉を続ける。
『このアクセサリーは貰っていいかい?捨てるよりは良いだろう?』
「云われずとも、最初から渡す心算だった。」
『おや、其れは嬉しいね。』
彼女はそう云って笑うと、この宝石を渡した後の依頼者の反応を教えてくれ。と云いながら2階へ宝石を仕舞いに行った。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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