第三話 探偵 ページ5
「そう言えば、会いたい探偵がいるといっていましたよね…誰のことです?」
ふと思い出し、安吾は尋ねると彼女の肩が跳ねる。
『……綾辻行人。』
その名を聞くと、眉をしかめた。
「正気ですか?」
彼がそう言葉を綴るのはそう長くは時間がかからなかった。
『私はいつだって正気だが。』
それに負けず劣らずの即答で返すAを見て、一つため息をついた。
「…特一級異能力者である綾辻行人。それを知っていたのにも関わらず、元ポートマフィアの貴女があの人と行動したいと?」
「貴女ほどの人なら綾辻先生の異能も調べているでしょう?」
『綾辻行人、異能力はanother…殺人事件の犯人を見抜くと“必ず犯人が事故死する”。勿論知っている。』
さも当然のように返すが、彼女はこれでもポートマフィアの人間であった。
「…貴女は、」
そう言葉を紡いでいる安吾の言葉を遮り、少女は口を開く。
『何も今すぐ死ぬ気はないさ、天才に不可能なことはない────騙して見せるよ、あの探偵をね。』
そう笑う彼女だが、坂口安吾は不安要素しか見当たらなかった。
彼女は天才、しかし、あの綾辻先生と関わるのは如何せん純粋すぎるのだ。
綾辻先生は頭脳明晰だが、非常に毒舌だ。
天才と自ら名乗っている彼女を小馬鹿にするのが目に見える。
「貴女は綾辻先生の性格を知らないから会ってみたいと言えるんです、太宰君のように揶揄われて苦手になるのがオチですよ。」
『…それよりも太宰が苦手なのが揶揄って来るから、と思われているのが心外だが。』
「…違うんですか?」
そうだと思って
『そんな餓鬼っぽい事をするか。私が彼奴を苦手だと思うのは単純に餓鬼だからだ。』
「…確かに、太宰君を15歳から知っている君からすれば尚更ですか。」
溜息を吐き、如何にか説得しようと試みるが、所詮どれも死なれたら困るという私情が混じり良い案が思い浮かばない。
『徹夜かい?実に健康に良くないねぇ。』
「数手先を読まないでください。」
もう一度深く溜息を吐き、何やら決心を決めた顔で此方を見つめてくる。
「…御存じでしょうが、あの人には今監視が付いています。」
「これまで監視任務に就いたエージェントの九割が、初日に“頼むから配置換えさせてくれ”と泣きついてきました。」
「この意味が分かりますか?」
『勿論。』
────彼女は笑顔でそう答えた。
69人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ