第三十七話 探偵社 ページ39
────或る日の探偵社内。
谷崎潤一郎は依頼を終え、武装探偵社へと戻った。
少しとはいえ、事件に巻き込まれたのだ。
彼は京極と同じ部屋に居たが、鍵等はかかっておらず、結局、館を抜け出して電波が届く場所まで歩いただけだった。
だが、万が一の為に探偵社でその事のあらましを説明していた。
其の為、今この場には社長や乱歩さん、太宰さん、全員が揃っていた。
「おや?未だに疲れた顔をしているけど、まだ何かあったかい?」
異変にいち早く気が付いた太宰治が訊ねる。
「いえ、其の……」
其処まで云うと、之は伝えて良い物なのかと考え、口が止まってしまった。
之、というのはAと呼ばれていた女性の事である……。
否、本当に社長や乱歩さんの知り合いなのか、其れを聞かなければならない……と思い直し、もう一度口を開く。
今度は社長や乱歩さんに向けて。
「あの、社長と乱歩さんにお聞きしたいんですが、Aさんという人をご存じですか?」
彼が太宰を呼ばなかったのは、彼女は太宰に対し苦手意識を持っていた……
其れは太宰さんも同じかもしれないと、太宰には聞かなかった。
「A?……ああ、確かにその名の知り合いは居るが。」
「僕と社長の共通の知り合いなら、一人知ってる。」
二人がそう返すと、本当に知り合いだったのかと驚く。
「僕がその、吊るされてたと説明した時に、黒髪の女性が居たと云っていたと思うんですけど……その女性が二人とお知り合いというので、本当か聞きたかったんです。」
「……」
太宰は同じ名前の女性か、と思い特に気にせず其の会話を聞いていた。
太宰の知っているAは彼女は死んだと伝えておいてくれと云って、その後……二年も行方不明なのだから。
「……一応確認なんだけど、そのAって……自称天才?」
乱歩は聞いた。本当に自身が知っているAか確かめたかったから。
《『──無論、私は天才だからな!』》
その声が頭に響く、確かに彼女はそう言っていた。
「はい。私は天才だからな!って、物凄く堂々とした笑みで云っていました……。」
その瞬間────ガタッと椅子から勢い良く立つ音が聞こえた。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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